今回提供開始されるのは、2010年末リリースのプライベートベータで提供された機能をさらに拡張したもので、「正式版に近いユーザエクスペリエンス」とクラウドサービスとしての完成度の高さが強調されている。
同社 インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長 ロアン カン氏は「震災後、マイクロソフトのクラウドソリューションがさまざまなシーンで使われており、復興支援の一端を担うことができて非常に光栄に思う。今回の危機で我々もクラウドのパワーを再認識した」と、震災後からクラウドへの注目度が高まっている現状を前置きした上で、「Microsoft Office 365は、これまでマイクロソフトが提供してきたデスクトップサービスの中から最上のものを集約したクラウド版パッケージ。SMBからエンタープライズまで、企業規模を問わずに最高のエクスペリエンスを提供できる」と語る。
Microsoft Office 365は従来まで提供されてきた同社のBPOSを置き換えるクラウドソリューションで、以下の4製品が含まれる。
・Microsoft Office Professional Plus … サブスクリプションベースのOfficeスイート
・Microsoft Exchange Online … オンラインベースのEmail/メッセージングサーバ
・Microsoft SharePoint Online … オンラインベースのコラボレーション/ドキュメント管理サーバ
・Microsoft Lync Online … オンラインベースの電子会議/IMサーバ
Office 365は組織のタイプに合わせ、以下の3エディションから選択可能になっている。
・Microsoft Office 365 for Small Business … ~25名の小規模組織/SOHO(最大50名)
・Microsoft Office 365 for Enterprise … あらゆる規模の組織
・Microsoft Office 365 for Education … 教育機関
このうち、日本語版パブリックベータが提供されるエディションはSmall BusinessとEnterpriseになる。Enterpriseエディションはさらに、インフォメーションワーカーの利用を中心とする「プランEファミリー」と、メッセージング/コラボレーション基盤をもたない店頭販売員や工場勤務者といった現場作業員の利用を中心とする「プランKファミリー」の2つのライセンス形態に分かれている。
どちらのライセンスにおいても、ユーザは利用したいサービスに応じて柔軟にプランを選ぶことが可能だ。月額利用料金は、Small Business(プランP1)で600円/人。EnterpriseはプランEの場合、1,000円/人(E1)から2,680円/人(E4)までの4タイプ、プランKの場合は401円/人(K1)と1,000円/(K2)の2タイプがそれぞれ設定されている。
日本マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスラインサービスグループ部長 磯貝直之氏は「Office 365はチームの生産性を高めるためのソリューション。バックエンドがクラウドなので、インターネットにつながる環境さえあれば、場所もデバイスも問わずに誰もがコラボレーション/コミュニケーションに参加できる。つまり、今まではオンプレミスでサーバを立てる必要があったサービスを、手間をかけることなく利用できる」とし、とくに震災後、改めて注目されている在宅勤務などオフィスから離れた環境にも十分対応できるサービスであることを強調する。
また、「世界中の誰もが使い慣れたOfficeのユーザインタフェースを利用できること、コンシューマサービスのHotmailで培ったデータセンター運営のノウハウを生かし、万全のセキュリティ対策を取れることも大きな強み」だと語る。なお、Office 365の提供においてマイクロソフトは厳密なSLA契約をユーザとの間で交わしており、「要求に満たない場合は返金を約束している数少ないクラウド事業者」であるという。
正式版のリリースに関しては、現時点では「2011年内中としか言えない」(磯貝氏)とのこと。現行BPOSからの移行を速やかに進めるのは当然だが、正式版がリリースされる前にも多くのユーザにクラウドを本格利用してもらうため、「クラウド導入支援キャンペーン」を4/20 - 5/31にかけて実施、期間中、BPOSを購入し、Office 365のパブリックベータの登録を行ったユーザには、1ライセンスあたり3カ月分のキャッシュバックが実施される(最大25ライセンス)。
「数多くのBPOSのお客様から"はやくOffice 365に移りたい"という声をいただいているが、その期待にふさわしい、より多機能なクラウドに進化したと実感している。これをきっかけに日本のクラウドがもっと加速する流れを作っていきたい」と磯貝氏。震災後、日本全体が落ち着かない世相にあるなかで、ますます重要視されるクラウドソリューションだが、現場の従業員にとって使いやすい環境のバックエンドサービスは実際のところあまり見当たらない。多様なライセンス形態と世界共通のUIでもって、一気に国内クラウド市場でシェアを高めていく構えだ。