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コモディティ化したミドルウェアはどこに向かうのか~非機能要件を巡る新たな戦い

IBM ディスティングイッシュト・エンジニア 山本宏氏

グローバル化によって非機能要件の差が問われるようになる

日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 技術理事(IBMディスティングイッシュト・エンジニア)山本宏氏

――今までのお話を総合すると、ミドルウェアの差別化の要素は限りなく小さくなっているようにも思われますが、いかがでしょうか?

 確かに、ミドルウェアは標準化、コモディティ化が進んだことは事実です。ただし、それは改良の余地が残されていないという意味ではありません。ミドルウェアの性能がシステム全体の質を大きく左右するという点は今も昔も変わりません。

 例えば、アプリケーション・サーバーで考えてみると、各社ともこれまでJava EE対応製品のリリースを続けてきています。実際、機能だけを見ると、どの製品もそれほど大きな違いがあるようには思えないかもしれません。しかし、仕様としてJava EEに対応していたとしても、実装の段階でいわゆる「非機能要件」という形の差が生じてしまうものです。

 今後、企業がグローバルに事業を展開していくとなれば、この非機能要件はさらに重要になります。例えば、世界各地の企業システムと相互に接続するようになれば、これまで8時間だけ動かせば良かったシステムを、24時間絶え間なく稼働させなければならないかもしれない。その時に非機能要件が持つ重要性が増すことは想像に難くないでしょう。

――具体的には、今後、どのような非機能要件が重要になるのでしょうか? それらが製品によってどのような差異として現われるのでしょうか?

 トランザクション、ワークロードバランス、ハイアベラビリティ、セキュリティーなどの非機能要件の充実は欠かせないでしょうし、自動化、標準化、仮想化などのクラウドを実現する機能も求められてくるでしょう。例えば、IBMではアプリケーション・サーバーとしてWebSphere Application Server(WAS)を提供しています。もちろん、多くの企業でも同様の製品を出していますが、WASは機能だけでなく非機能要件でも絶対的な自信を持っています。

 例えば、IBMがメインフレームの時代から培ってきたトランザクション機能をSOA環境でも利用できるように発展させています。一見すると、Webサービスでトランザクション機能が必要かと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、SOAをベースとしたサービスをWeb上で提供することを考えた場合にはどうでしょう。今後、インターネット環境下でのサービスやシステムの数が増加した場合、複数のサービスを一つのトランザクションスコープで処理するニーズが出てくることは容易に考えられます。

 さらに、先ほど、IBMが業務向けソリューションのポートフォリオを積極的に拡大していることをお話ししましたが、それらはWAS上でパフォーマンスをより発揮できるようチューニングを施しています。もちろん、お客様のご要望次第ですので、他社のミドルウェアでも動くようになっていますが、WASでは、より厳しい性能要求にも応えられるというわけです。

 この6月にはWAS V8をリリース予定です。新バージョンでは、開発生産性を高めるためのJava EE 6への対応と性能、運用管理、ハイパーバイザ対応が更に進化しています。

――可用性、信頼性といった非機能要件の充実はグローバル展開している企業のシステムにおいて非常に重要なことですね。ところで、ミドルウェアといえば、最近ではHadoopやストリームデータ処理といった新しい技術が登場していますね。

 確かに、最近ではビッグデータと呼ばれる大量のデータを処理するために、インメモリ処理やストリーミング技術など利用するエクストリーム・トランザクション処理(XTP)にも注目が集まるようになりました。しかし、すべての処理がこれらに移っていくわけではありません。非常に有用な技術であることは間違いありませんが、スピードやデータ量を優先するためにXTPではBASEトランザクションというポリシーを採用しています。これはデータの一貫性を保障する従来型トランザクション処理とは大きく異なるものです。

 むしろ、従来型のトランザクションとBASEトランザクションは相互補完的な関係にあると考えるべきでしょう。要件に応じて最適な技術を選択することが重要になります。CICS/IMSで制御されるトランザクション処理はこれからも進化し続けます。クリティカルな業務と迅速なデータ処理が求められる業務が今後も併存していく以上、トランザクション処理方法も併存していくわけです。

図3:新旧処理技術の関係性
図3:新旧処理技術の関係性

 とはいえ、メインフレームで培った技術を存分に取り入れたWASもXA・OTS準拠に加えてWebサービストランザクションやコンペンセーションに代表される新しい技術を既に組み込んでいます。Java EEファンデーションとしてのWASは他のIBMソフトウェア製品やM&Aで買収した業務特化型ソリューションの基盤として今後も進化を続けることになるでしょう。

――ありがとうございました。

 

 

山本 宏(やまもと・ひろし)
 

日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 技術理事(IBMディスティングイッシュト・エンジニア)。1990年代中盤よりSOM/DSOMやOpenDocと呼ばれた分散オブジェクト技術の普及、プロダクションシステムへの適用の取り組みをスタートし、製造・通信・金融セクターなどでの大規模異機種CORBAプロジェクトに従事する。その後J2EE技術による金融系ミッションクリティカル・プロジェクトや、公益系および製造系のWebサービス本番プロジェクトのアーキテクチャ設計を担当し、現在はSmartGridのプロジェクトに従事。2008年に技術理事に任命され現在に至る。

 

 ・ 日本アイ・ビー・エム株式会社(http://www.ibm.com/jp/ja/

関連情報
IMPACT 2011

今回のインタビューに対応いただいた山本氏は、2011年7月14日(木)に東京都内で開催されるWebSphereブランドの年次カンファレンス「IMPACT 2011」でも、「アプリケーション基盤における20年の軌跡と今後の方向性」と題した講演を予定しています。詳しくは公式サイトをご覧下さい。

 

WebSphere Application Server V8.0 アナウンスメント・ワークショップ
また、8月4日(木)と5日(金)の2日間、WAS V8.0の新機能を紹介する技術者向けワークショップの開催を予定しています。1日目は、新機能の概要とWASインフラ構成を、2日目は、Java EE 6仕様の更新部分や、WAS V8.0のアプリケーション関連の新機能など、アプリケーション開発に関する内容を紹介する予定です。

 

その他、記事内で紹介した最新版の「WebSphere Application Server V8」に関する情報もご覧下さい。

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