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失敗を学びに変えるアジャイルなマインドセットとは?~Agile 2011 Conference

Agile 2011特別レポート DAY5


 8月8日から12日までの5日間にわたって米国ユタ州のソルトレイクシティで開催されている世界最大級のアジャイルイベント「Agile 2011 Conference」。現地レポーターの藤原大と川口恭伸が世界におけるアジャイルの今を探ります。本稿では、"Fearless Change" (Addison-Wesley Professional) の著者Linda Rising氏のクロージング・キーノート「Agile Mindset」を紹介します。

リンダ・ライジングさんによる5日間を締めくくる基調講演

 参加者に語りかけるリンダ・ライジングさん
参加者に語りかけるリンダ・ライジングさん

 Agile 2011 Conference最後日の基調講演には、リンダ・ライジングさんが登壇しました。リンダさんは、現在ナッシュビルを拠点に活動されている独立コンサルタント。彼女の著書 「Fearless Change」 は、人々が自分の属する組織に新しいアイデアを導入する過程・ノウハウについて書かれたもので、アジャイルに関わる人の間で広く読まれています。また、彼女は古くから「パターンランゲージ」のコミュニティでの活動を行っており、「パターン・プリンセス」とも呼ばれています。

 今年4月に「アジャイルジャパン2011」の基調講演のため、震災から一ヶ月しか経っていない日本に、周囲の反対を押し切って来てくれたことをご記憶の方も多いことでしょう。講演終了後に、急遽用意した Ask the speaker ブースに長い列ができましたが、その一人一人の質問に誠実に答え、その誠実な人柄と包容力が著者にとっては大変印象的でした。

 基調講演に話を戻しましょう。リンダさんは次のように話を切り出しました。 

 

 

まだ、みなさん死んでないですよね。おそらく、私は人生の始めよりは終わりの方が近いでしょう。今の私の人生のミッションはあなたたち、とても若いあなたたちが私がしたような失敗をしなくてすむようにすることです。心理学の、技術的でない「ふわっとした(fluffy)」事柄を無視しないでください。アジャイルが私たちにもたらしたものも、ふわっとした人間同士の事柄を現実として捉える、ということだったのですから。

 

 実は、今回のAgile 2011 Conferenceでは2日目の基調講演に社会心理学者のバーバラ・フレデリクソンさんが登壇。奇しくも、人間のポジティブな感情「Positivity」について講演しています。主催者側は意図的な組み合わせではないと回答していますが、2つの基調講演の内容が偶然にもマッチしていたことは、アジャイルを考える上での「こころ」の重要性について物語っているようにも思われます。さて、リンダさんは、次のように問いかけます。「あなたはどちらの意見が正しいと思いますか?」

  • 「かしこさ」は生まれ持ったものであって、あとから変えることはできない
  • 現在、かしこいかどうかに関わらず、「かしこさ」を改善することは可能である

 「かしこさ」の部分は他の能力や才能に置き換えても構いません。飽くなき向上心を備えた読者の皆さんは、後者が正しいと即答されることでしょう。皆さんは、これまで様々な努力を積み重ねてきた結果、自らの能力を向上させられたという実感を持っているからです。しかし、「私がそうだったから」というだけでは、前者の考え方を持った人々を説得することは難しいでしょう。

 例えば、製薬会社の営業マンが「この青い薬はすごくいいですよ。私も使ってみたけどすごくいい。大好き。とても気分よくなったし、生産性も向上した。顧客は幸せになった。私は人生を楽しんでいる。だって青い薬なんですよ。あなたも飲まなくちゃ」なんて売り文句を口にし始めたら、どうでしょうか? きっと、皆さんは怪しむのではないでしょうか。

 自分の考えを他者に受け入れてもらうためには、それが主観的な思い込みではなく、根拠に基づいた妥当性の高いものであることを示す必要があります。先ほどの「かしこさ」の命題について心理学者や教育学者が公的に自らの見解を述べる場合、統計的な有意性を見出せるまで彼らは実験を重ねるでしょう。それは、必ずしも学者に限ったことではありません。例えば、私たちが新しいアイデアを組織に導入したいと考えた場合にも、程度の差はあるにせよ、同様のステップを踏む必要があります。

 一見、当たり前のことのように思われることですが、例えば、他人に対してアジャイルを勧める際に、先ほどの製薬会社の営業マンと同じような言葉を口にしてはいないでしょうか。「私には効いた。あなたもやるべきだ」というだけでは、他者の納得を得ることは難しいでしょう。アジャイルを広めるにあたって、私たちにはもっと科学的なアプローチを考える余地があるのではないでしょうか。果たして、私たちはたくさんの実験を行ってアジャイルのよさを統計的に確認していると言えるでしょうか?

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児童に行った心理学実験

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この記事の著者

川口 恭伸(カワグチ ヤスノブ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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