2011年7月、IT専門調査会社IDC Japanが「国内リレーショナルデータベース 管理システム(RDBMS)市場予測」を発表している。2011年の国内RDBMS市場規模は1,466億1,900万円、2010年からは8.5%縮小する見込みだ。また、2010年から2015年の年平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は1.6%で、2015年の市場規模は1,709億5,400万円になると予測している。2010年は、リーマンショック以降の市場の大きな落ち込みから復帰し、少し右肩上がりの傾向が見られたが、3月11日の東日本大震災の影響を受け2011年の市場は再び大きく落ち込む予測となっている。
*本取材は2011年7月に取材されたものです。
リーマンショックと震災が市場に与えた影響の違い

ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー
赤城知子氏
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャーの赤城知子氏は、「今回の市場予測においては、震災の影響をネガティブに見ています。しかし今後の市場においては、ある意味ポジティブな面もあります」と語る。2008年から2009年にかけ、リーマンショックの影響は予測段階で7%のマイナスと見ていた。しかし、実際は2%程度に収まり、考えていた以上に底堅かったとのこと。対して今回は、8.5%のマイナスと予測しており、かなり厳しい数字ではある。
これまで、データベースの市場動向を予測する際、もっとも影響を与えるのが同じ時期のサーバー市場動向だ。ようは、サーバーがたくさん売れれば、データベースも売れる。ところがリーマンショック以降「サーバーの出荷動向は良くなかったが、情報管理の側面では手堅いものもあった」とのこと。それが、予測よりデータベース市場が落ち込まなかった理由の1つだ。
2007年頃までは、企業のITにとってERP製品の導入が1つのゴールであり、それによりビジネスプロセスを管理し効率化することが理想とされてきた。この時代、データベースはすでに成熟した製品と位置づけられ、あまり表舞台で取り沙汰されなくなっていた。その状況が、2008年頃から変化する。ERPでのプロセス効率化は「やり尽くした感」が出てきたのだ。さらに、ERP導入の次のステップとして全社規模でデータ活用をしようとしても、社内のシステムごとにマスターデータが不整合を起こしていてうまくいかないという事態が起こり始めたのだ。
その結果、マスターデータ整備を改めて考え、再び注目を集めるようになったのがデータベースだ。さらに、この時期からキーワードとなるのが「クラウドコンピューティング」。これらをきっかけに社内のIT環境を見直す動きが出て、ERPのようなアプリケーション層からデータベースやストレージなどのインフラ層への投資が再び積極化し始めた。これらが、データベース市場の底堅さにつながっていたのだろう。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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