データ分析が苦手な日本企業がなぜビッグデータに群がるのか?
谷川: ここまでのセッションでは、ビッグデータをテーマにさまざまなビジネスの可能性を探ってきました。ですが、あえてこの対談では「ビッグデータは本当にバズワードから活用するシーンに突入したのか?」を取り上げてみたいと思います。というのも、ビッグデータという言葉がブームになればなるほど、現実とは大きく乖離しているのではと感じるんですね。ビッグデータに取り組む前に、そもそもデータを活用するということに真剣に取り組んできた企業はあまり多くないんじゃないかと。これまで蓄積してきたデータはどう扱ってきたのか? という疑問が残るのですが。
生熊: 非常に残念ですが、私が見る限り、多くの企業は「情報系/分析計のシステムには来年は必ず投資する」と言いながら、その率はなかなか上がっていません。たとえばすこし前にブームになったBIの場合ですが、「BIを使ってよかったと思いますか?」という質問をしても、自信をもって「満足している、うまくいっている」と応えられる企業は1割にも満たないのではないでしょうか。正直、データ活用に関してうまく行っている企業は非常に少ないのが実態だと思います。
JSOXやIFRSなどがブームになったときは、日本企業もそれなりに投資をしてきましたが、BIなどの分析系に対しては以前から投資の伸びがついてこない。ではなぜ、いま"ビッグデータ"に注目があつまっているのか。それはビジネスがうまくいってないことが最大の理由だと思います。モノが売れないだけでなく、いままでうまくいってたビジネスがどんどんダメになっていく。顧客のニーズを正しく捉まえることができていないと企業が気づき始めたんですね。グローバル化、不況、デフレなど、ビジネスを阻害する要因はいくつもありますが、とくに「KKD(カン、経験、度胸)が働かない」「世の中のスピードについていけない」という点が日本企業の経営者を苦しめていると感じます。
谷川: たしかに、何をやってもうまくいかないという閉塞感が日本市場全体を包んでいる雰囲気はありますね。
生熊: その閉塞感を打ち破るためにITで何ができるのかと考えたとき、たとえばERPでプロセスを最適化するといったようなこれまでのやり方を踏襲しているだけではダメで、やはり新しいことに取り組む必要があります。そこで脚光があたってきたのがデータの分析という考え方なのではと思います。