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谷熊対談

データウェアハウス戦国時代に思うこと(前編)/もう、スペックはどうでもいい

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あの企業が買収されて、あの製品は、あの技術はどうなってしまうのか?いま、エンドユーザーの熱い視線はどこに向けられているのか?―谷熊対談では、DB Onlineチーフキュレーターの谷川耕一と、ITRのアナリスト生熊清司が、技術革新からベンダー最新動向、業界ゴシップまで、時には深く、時には広く、おおむねゆるく、語り合います。第1回目のテーマは「データウェアハウス」です。

もはや過去の蓄積では未来を予測できない

「DWHは間違っていなかった、
ただ結果がついてこなかっただけで…」(谷川)

谷川:日本でデータウェアハウス(以下、DWH)なるものが最初に流行ったのが96年くらいですよね。

生熊:96年から97年くらいですね。テラバイトなんていうのが出てきたのもこのころです。当時は300ギガで超大型データっていう時代です。テラって言われても「はぁ?」っていう感じで(笑)。

今やテラバイトなんて普通だし、物理領域ではペタバイトまで出てきているけれども。

谷川:第一次DWHブームって、いまいち使いこなせなせずに終わったなーっていう印象があるんですよ。あのときはDWHを入れること自体が目的だった。それで成功している企業も少しはあったけど、結局のところ、大波にはならなかった。

生熊:理論的には正しいんですよ。「すべてのデータを一元的において検索すれば必要なデータが取り出せるだろう」と。

理屈としては正しいんだけど、実際に、何をいれて何を出すのかってところが、あいまいだったんじゃないかと思います。あいまいだから、利益が出ない、効果が出ない。ROIが悪い。3億かけました。で、なにがよかったの?っていう…

谷川:今も昔も理想とするところは間違ってはいない。間違ってはいなかったけど、結果がついてこなかっただけで。

生熊:いわゆる分析系はテクノロジーと同じくらい、使う人のスキルセットや社風が大事なんですよ。DWHなりBIなり技術をつくって、若いひとがいろいろなことを分析しても、上司がそれを受け入れられるだけのマインドセットがなければ意味がない。上司が「いや、俺の経験によるとな…」ってなったらおしまい(笑)。

谷川:テクノロジーと、使う人のスキルセット、データセントリックな思考を持つという社風…以前のままのマインドセットでデータをみてもだめなんでしょうね。

生熊:いまや、「不確実性の時代」です。昔は、3~5年くらい前のデータを蓄積して比較してたんですが、今はブームそのものが短いので、過去と比較してもわからない。

谷川:昔は過去のジグザグを結べば、未来が予測できた。少なくとも、そういうことになっていた。過去が連続的につながっていれば、明日が予測できると。今は、過去が不連続でベクトルがわからない。明日が読めない。戦略、計画が立てられない。意思決定ができない…

「下手な鉄砲を数撃たなきゃいけない時代」(生熊)

生熊:じゃあどうするの?っていったときに、過去の連続ではなく、昨日のことを、数分前に起きたことを利用するというのが最近の分析系の流行です。Twitterで広まったら、翌日に売るとかですね。起きたことに対してリアルタイムで意思決定するわけです。

谷川:もともとDWHっていったときの、データを溜めるという倉庫的な要素と、それをある程度時間をかけて分析するという部分は、従来通りあるとは思うんですね。

ただ、それとは別に即座に判断するためのBI/DWHっていうのが今回のブームを牽引しているような気がします。

生熊:昔は「いつかはクラウン」っていったじゃないですか。

まずは小さい車からはじめて、結婚したらカローラ、コロナ、部長になったらマークⅡでいつかはクラウン、というようなライフスタイルのテンプレートみたいなものがあって、定型的な方法論でマスの消費者に向けてマーケティングができた。この方法で昔は60~70%カバーできたんですよ。今は10%ぐらいじゃないかな。

そうすると、へたな鉄砲を数撃たなきゃいけなくなってくる。ゆっくり分析して、ちょっとだけ撃つんじゃだめで、どんどん撃っていかなければいけない。もちろん、全部はあたらない。あたらなかったらすぐ次を出す。

谷川:DWHを現場で使う人が増えれば、おのずと撃つ玉は増えますよね。

昔は、DWHを使う人って限られていたじゃないですか。上層部が使ってその結果を現場に落とす。だけどそのやり方じゃ、現場に落ちてくる頃にはすたれてしまう。今だったら、現場の人がDWHを利用してその結果を見るために上層部が使うくらいでないと。

生熊:そもそもインターネット自体が分散して流行ったわけで。

大きな流れだけをつかむんじゃなくて、小さな流れがいくつもあるというのがインターネットの世界です。集約された情報ではなく、小さい粒度のデータ。ひとつひとつのデータが持ってる意味は小さいのが分散型です。だけどそれが、一瞬にして大きいものになる場合がある。そういうことに対応できる意思決定のシステムがないと、世の中に対応できないですよね。

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この記事の著者

小泉 真由子(編集部)(コイズミ マユコ)

情報セキュリティ専門誌編集を経て、2006年翔泳社に入社。エンタープライズITをテーマにイベント・ウェブコンテンツなどの企画制作を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/3234 2012/02/10 17:26

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