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週刊DBオンライン 谷川耕一

SaaSと呼ぶなかれ、事業コンシェルジュとはなんぞや?

ビッグデータの陰に隠れ、クラウドというキーワードはちょっと勢いを失った感もある。いや、むしろクラウドはすでに定着して、もはや当たり前のものになったと言えるかもしれない。最近は、新規になんらかシステムを構築しようとする際、オンプレミス型よりもクラウドを選択する機会が増えているなと感じる。サーバーを買う、そしてセットアップする手間もないので、すぐに開発に入れるのはかなり便利。できあがったものを公開するのも、もともとインターネット上に環境があるので簡単だ。Salesforce.comのようなPaaSを使えば、開発言語でソースコードをゴリゴリ書かなくても、部品を組み合わせたり設定を行ったりするだけでそれなりのものができる。

弥生が目指すのはたんなるSaaSではなく事業コンシェルジュサービスなのだ

 先月のことになるが、そんなクラウドの世界に国産会計ソフトとして有名な「弥生会計」を提供する弥生が参入との発表があった。その第一弾が「やよいの店舗経営オンライン」というクラウドサービスだ。

 これ、基本的にはソフトウェアをインターネット越しに提供するSaaS型のもの。とはいえ、弥生の今回のサービスでユニークなところは、たんにソフトウェアをクラウドの形で提供するだけではなく、クラウドのサービスを活用して店舗経営業務そのものをサポートするところだ。

ソフトウェアだけでなく、店舗経営業務そのものをサポートする
ソフトウェアだけでなく、店舗経営業務そのものをサポートする「やよいの店舗経営オンライン」

 これを弥生では「事業コンシェルジュ」と呼んでいる。使いやすいクラウドサービスを提供するだけでなく、その後ろに会計士や税理士を配置し、店舗経営に必要となる会計や税務そのものをサポートする環境の提供だ。

 店舗などでは、クラウドであろうがオンプレミスであろうが、別に会計ソフトが欲しいわけではない。日々の伝票整理なりがきちんと行えて、年度末には確実に税務処理ができればいいだけ。それをスムースに行うために、仕方がなく会計ソフトを使っているのだ。

 会計ソフトを利用していないような店舗でも、日々の入出金管理などは行っているはずだ。ノートに手書きというのもあるかもしれないが、Excelなどの表計算ソフトくらいは使っているだろう。

 「やよいの店舗経営オンライン」では、Excelにメモするくらいの簡単さで、日々の入出金をメモする。すると、同じクラウドに会計事務所なりがアクセスし、店舗で入力したデータをきちんと仕訳し整理してくれるという仕組みだ。最終的には、会計ソフトの弥生会計に取り込んで、期末の会計処理を行うという流れとなる。つまりクラウドと会計事務所のサポート業務を1つにしたのが今回のサービスの特長だ。

「業務ソフトウェアベンダーからクラウドサービスで事業コンシェルジュを目指す」と弥生の岡本社長
「業務ソフトウェアベンダーから
クラウドサービスで事業コンシェルジュを目指す」
弥生の岡本社長

 この「やよいの店舗経営オンライン」は、弥生のパートナー会計事務所経由での販売となる。クラウドのソフトウェア部分の利用料は、初期費用なしの月額1,470円。これなら、それほど高い値段ではないだろう。ただし、会計事務所のサポート料金は別途となる。すでに会計事務所や税理士事務所と契約し、顧問料を払っているところもあるだろう。その費用よりは、会計事務所の手間が減る分、この仕組みでの顧問料は安くなるのではというのが弥生の予測だ。

 そして、日々のお金の動きが明らかになるので、会計士からの資金繰りのアドバイスなどもやりやすい。これが1ヶ月分の売り上げ明細や経費の領収書を、月初にドカッと会計事務所に送って処理してもらうとなると、資金ショートする可能性も早くて半月後くらいにならないと分からない。それでは手遅れかもしれない。タイムリーなアドバイスが可能になり、会計事務所側も作業負荷の軽減につながるのだから、このSaaSと会計サービスの組み合わせというのはかなり理にかなっている。

 現状、多くのSaaSのサービスは、既存のソフトウェアをインターネット越しに使えるようにしただけのものがほとんどだ。それでも、かなり便利になりコストも下げられる。しかしこれからは、さらなる1歩となるサービスとして、クラウドのソフトウェアを活用して、プラスそれに人が行うサービスを一体化して提供するというものがどんどん出てくるのではないだろうか。クラウドでもオンプレミスでもソフトウェアはあくまでも道具に過ぎない。それを使いこなすためのサポートと一体化してサービス化することを、ベンダー側も真剣に考えるべきときなのかもしれない。

 ちなみにこの「やよいの店舗経営オンライン」は8月からβプログラムが始まり、正式リリースは9月3日の予定。システム自体はWindows Azure上で構築されており、データベースにはSQL Azureが利用されている。データ保全の仕組みもきっちり行われているので、ローカルのPCに会計ソフトを入れて利用するよりも安心とも言える。今後、弥生では、既存のソフトウェアをSaaS化していくことももちろん行う。同時に今回のようなクラウドを使った事業コンシェルジュ的なサービスについても、さらに適用範囲を広げていくとのことだ。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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