IODC Japan 2013で“新たなDB2の姿”が明らかになる
企業におけるビッグデータ活用、それを実現するために必要なシステム構成要素は、いまや多岐にわたる。当初はHadoopなどの、ビッグデータ用として「最近になって新たに登場したもの」が注目を浴びた。しかしながら、昨今のビッグデータ活用の「実践」を考える段階になってからは、改めてビッグデータ活用のためのインフラ、つまりは従来のデータベースやBIなどの技術に再び注目が集まっている。今回のIODC Japanにおいても、ビッグデータ活用の実践をすでに行っている企業の具体例を紹介するセッションや、さらには最新のビッグデータ活用のためのインフラ技術を解説するセッションが多数用意されている。
ビッグデータインフラという観点から注目すべきなのは、午後の部のE、Fトラックだろう。ここには、データベースという大量データを扱う上での基本中の基本技術を、ビッグデータ視点で解説するセッションが多数ある。その中でも注目なのは、E-4のセッションだ。ここでは、DB2の最新版についての紹介があるという。
「DB2は、pureScaleというクラスターの仕組みを加えたことで、高い拡張性と高い可用性を提供するシェアードディスク型と、高い性能を発揮する従来のシェアードナッシング型という2つのアーキテクチャを実現しています。今回の新しいバージョンは、そのDB2の用途をさらに大きく広げる機能拡張です。DB2にXMLやpureScale機能を取り込んだのに匹敵、いやそれ以上にインパクトのある機能拡張だと考えています。」
日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部 データマネジメント製品営業部 部長の池田高也氏は、新しいDB2はメモリやストレージをより有効に活用することで、データウェアハウスのような分析系の処理とOLTP系の処理を共存させられるようになると言う。
ビッグデータ時代になり、顧客ニーズはさらに多様化している。大量データに対するリアルタイム分析、高いレスポンスでのトランザクション、極めて高い可用性。これらに対し、たとえば2010年にpureScaleの提供を開始し、オープン系システムでメインフレームに匹敵する高可用性という顧客ニーズに応えてきた。IBMは、用途に最適化したラインナップを提供することで、多様な顧客ニーズに応えている。さらに、顧客からはスピード感も求められるので、アプライアンス型のPureData Systemも加えている。
大量データを効率的に処理するには、用途別に最適な性能、機能の提供が望ましい。とはいえ、1つのデータベースの中で複数ニーズを満たしたい要望もある。新しいDB2は、まさにそれに応えるものとなるようだ。
「シングルデータベースの中で、どこまで実現できるかを追求した製品となります。DB2が機能や性能面で、さまざまな形でハイブリッド化するものだと考えてください」と池田氏。ハイブリッド化することで、効率化がなされ結果的にはコストも下がる。さらには、運用管理の負荷も軽減する。そして、それだけでなく従来製品と比べても「大幅な性能向上が見込めます」と池田氏は言う。いったいどのような仕組みでそれを実現しているのか、気になる人はぜひE-4のセッションに参加してみて欲しい。
米IBMのCTOティム・ビンセント氏が初来日、DB2の将来像も紹介
もう1つ、DB Onlineのキュレーターとしてもぜひ参加したいのが、E-3のセッションだ。DB2のChief Architectでもあるティム・ビンセント氏の講演だ。「ティムは、世界に77人しかいないIBMフェローの1人で、DB2を含めたインフォメーション・マネジメント製品のChief Technology Officer(CTO)です。技術的なアーキテクトのトップを務める人間であり、今回は日本に初めて来日します」と池田氏。
ビンセント氏は、めったに海外に出て講演を行うことはないそうだ。その彼が、わざわざ日本までやって来てDB2について語る。さらに、前述のDB2の最新版についても、ワールドワイドでプレス発表後すぐのタイミング、つまりは初のユーザーお披露目の場がIODC Japanとなる。これらをみても、今回のIODC JapanをワールドワイドのIBMとしてはかなり重要視している姿がうかがえる。
ビンセント氏のセッションでは、最新版のDB2のさらに先となる「DB2の将来像」についてもテクノロジー・プレビューの形で紹介される予定だ。講演の内容としては、実績のあるXML機能の拡張について、さらにはJSONを含めたDB2で扱えるデータフォーマットの拡張についてなど、今後の製品機能開発の方向性について解説があるという。データベースという基盤ソフトウェアが、今後どのような進化を見せていくのか。興味がある人は、ぜひともビンセント氏のセッションに参加すべきだ。
個人的な見解ではあるが、DB2はバージョン9.5の時代までは、Oracle Databaseに追いつけ、追い越せで拡張、機能追加されてきたイメージだった。それがバージョン9.7となり、DB2ならではの機能、性能が「グッと」オモテに出てきたように思う。もちろん、IBMとして9.5まででは手を抜いていた、なんていうことは決してないだろう。だが、ここ数年のDB2で「IBMもいよいよ本気になったな」という感があったのも事実ではないだろうか。
DB2では、当然ながら最近話題のインメモリデータベース機能なども視野に入っているようだ。各社のデータベースが、まさに切磋琢磨で大きく進化している、そのまっただ中にある製品の1つだ。そんなDB2の現実、そして将来の姿を確認したければ、今回のIODC Japanは最適な機会となるだろう。ちなみに、DB2関連のセッションに参加すると、2月26日に刊行されたばかりの最新書籍『DB2 10 エバリュエーション・ガイドブック』(翔泳社発行)がプレゼントされるとのことで、この情報も要チェックだ。