小さなマーケットでもシェアトップを狙え
冒頭に登壇したのは特定非営利活動法人 LPI-Japan 理事長 成井弦氏。OSSのビジネスモデルには大きく分けて4パターンがあるという。「貢献の競争に勝つ」、「サポートで稼ぐ」、「自社ソフトのオープンソース化」および「サポートソフトのオープンソース化」である。
筆頭に挙げた「貢献の競争に勝つ」とは、オープンソースコミュニティへの貢献を通じて自社のビジネスを有利な方向へ導くということ。成井氏は「最大の貢献者は最大の受益者」としてサムソンを例に挙げた。サムソンは近年精力的にAndroidの改善に貢献している。その狙いは自社のソースコードやパッチがAndroidで多く採用されればされるほど、機能面あるいは宣伝効果も加わり、Androidのビジネスで有利な方向に導けるようになることにある。
日本のメーカーの中でもLinuxなどで積極的に貢献している企業もある。成井氏は「自社が得意な分野でオープンソースの貢献という競争に参加し、そして勝つ」ことがOSSのビジネスモデルで重要だと述べた。
続くビジネスモデル「サポートで稼ぐ」は既存のOSSをベースにサービスで差別化を確立するということ。例に挙げたのはRedHat社。既存のLinuxを検証し「RedHat Linux」と名付けてディストリビューションやサポートなどでビジネスを展開していることを挙げた。同社は近年では「Linux+Jboss」という形で幅を広げてビジネスを展開している。
残りは「自社ソフトのオープンソース化」および「サポートソフトのオープンソース化」。自社開発したソフトウェア、あるいは自社製品をサポートするソフトをオープンソース化するということ。オープンソース化し基本的にはフリーで提供するものの、一部のユーザーには高度な機能あるいはサポートなどでビジネスにする。これは基本機能を無料で提供し、高度な機能には課金するという「フリーミアム」的な考え方に近いかもしれない。
サポートソフトのオープンソース化の例となるのがSafariのレンダリングエンジンとなるWebkit。ハード機器のドライバも同様に該当するという。こうしたソフトウェアでビジネスにするのは難しい。そのため、オープンソースとしてソースを開示したほうが維持管理の面でも有効というのが成井氏の考えだ。
これらのビジネスモデルを具体的に実践に移すためのステップも提示された。まず計画段階では、自社の強みを生かしてナンバーワンをなりうる分野を特定すること。次にそのための組織作りを行う。オープンソースであればコミュニティを含めた組織作りを行うことになる。ここにはコミュニティのメンバーを引きつけるような「ソフトパワー」が鍵となる。その後は組織と顧客を目的達成の方向へ導く。これには広報宣伝だけではなく、社内およパートナーの教育を行うことになる。ここに認定制度を活用するのも有効とのこと。
成井氏は「Differentiate or Die」、つまり「差別化のみが(今後のビジネスで)生き残れる道」であると主張した。たとえ小さなマーケットでもシェアでトップを取ることが大切で、そうすればグローバル展開の道も開けるという。「自社が得意とする分野にオープンソースを絡めて差別化を強化するのがベスト」と聴衆を激励した。