今年のPulse Japanは「ビジネス成果」を重視、事例講演も多数
今年で6回目の開催となるPulse Japanのテーマは「クラウド、モバイル、セキュリティー。進化したテクノロジーが実現する、インフラのスマートな最適化」。主に以下の4つの観点からビジネス成果につながるIBMの最新ソリューションやユーザー事例が、講演や展示により紹介される。
・クラウド・コンピューティングを中心としたITの最適化
・モバイル・デバイスを含むエンドポイント管理
・企業資産・社会インフラ管理
・セキュリティー(「IBM セキュリティー・コンファレンス 2013」を併催)
特に今年はユーザーの事例講演が数多く用意されている。従来、Pulse Japanの対象はCIO、ITマネージャーから現場の担当者までの幅広いIT関係者としていたが、今年は加えて経営企画や総務、リスク管理担当者にも有用な内容が用意されている。
Pulse Japanには、毎年事前に開催される米国のPulseの要素が取り入れられてきたが、テーマ選択にはじまり、特に今年は関連性が強められている。これは日本企業のグローバル指向がより強まっていることが背景にあるようだ。実際、109か国から約8000人が参加した米国のPulseには、日本から過去最高の100名近い参加者が集まり、数多くの英語によるプレゼンが行われた。
注目したいのが、インフラから発生する大量なデータ(ビッグデータ)をアナリティクス・ソリューション活用によってインフラ最適化に導く、という考え方が初めて米国Pulseの主要メッセージとされたことであり、これはPulse Japanでも引き継がれている。クラウド、モバイル、セキュリティー、企業資産・社会インフラの4つのテーマは別々のテクノロジーで個別に管理されるのではなく、相互につながり合うことにより、企業システムに蓄積されるデータ量は膨大になるが、これらを活用すればビジネスの迅速化やリスクマネジメントなど大きな成果を得ることができる。
JTBグループ、大成建設、パナソニックなど実践企業も多数登壇
Pulse Japan 2013の注目ポイントを紹介する。午前中の基調講演・特別講演ではまず、Tivoliの事業部長とグローバルのエグゼクティブから、IBMが今回のPulseにおけるテーマに関して、どういう戦略に基づいて取り組んでいるかが語られる。
続くセキュリティー・インテリジェンスのセッションでは、2013年1月にリリースされたIBM Security QRadarの紹介とデモンストレーションが行われる。この製品は、ログや脅威、脆弱性やリスクに関連したデータを収集、蓄積し、分析するための統一アーキテクチャーを提供するもので、今回、フォーカスされている注目の製品の一つだ。
ユーザー事例の特別講演は2つ。まず株式会社JTB情報システムから、JTBグループにおけるITサービスマネジメントの取り組みが語られる。ITサービスの品質を向上させることにより、いかにビジネスに貢献したかがテーマになる。
続く新日鉄住金ソリューションズ株式会社のセッションは、最新クラウド・データセンターの事例紹介になる。IBMのソリューション導入の背景、データセンターを取り巻く環境、同社のチャレンジ、将来展望などが語られる。
午後からのセッションでは、Pulse Japanの4つのテーマ、クラウド、モバイル、企業資産・社会インフラ管理、セキュリティーに「サービスマネジメント製品最新動向」、「IBM System z 環境の統合管理とセキュリティー」を加えた7トラック、33の講演が用意されている。
その中で「クラウド・コンピューティングを中心としたITの最適化」のトラックではまず、パナソニックITソリューションズ株式会社の事例セッションに注目したい。グローバル経営を加速するIT基盤の構築と同時にコスト30%削減を目標に掲げ、IBMのクラウド・サービスを適用した理由、今後の展望などが語られる。また、IT開発者と運用管理者の一体化をめざすDevOpsサービスをクラウド上で提供するIBM SmarterCloud Application Servicesと、IBM Rationalのチーム開発支援ツールにフォーカスしたセッションがある。IBMでは2012年3月からクラウド・サービスにおける可視性、管理、自動化を加速させる製品群を「IBM SmartCloud Foundation」として提供しているが、新製品のお披露目も期待できそうだ。
「モバイル・デバイスを含むエンドポイント統合」のトラックでは、セキュリティーのセッションが注目だ。今や企業システムへの入り口はPCではなくモバイルであり、そこではやはりセキュリティーが重要だ。IBMは、セキュリティー・ポートフォリオに基づいた様々な観点からのセキュリティーを提供しており、自身の実体験に基づいた事例紹介が中心になる。
「企業資産・社会インフラ管理」トラックでは、ユーザー事例が数多く用意されている。たとえば一般財団法人 日本海事協会は、IBMのMaximoを採用し、船に取り付けたセンサーから異常検知情報を収集し、解析している。センサーから上がってくるデータ量は膨大で、1年間で1隻あたり108テラバイトになる。5万隻管理しているので、1年間で5.4エクサバイトだ。通常のITデータセンターとは桁が違うデータを扱う、MaximoとIBMのビッグデータ・テクノロジーを活用している事例紹介になる。
スマーター・シティの観点では、大成建設株式会社が建物のライフサイクルコストの削減をめざした取り組みを紹介する。また昨今問題になっている老朽化した社会インフラに対し、データを一元管理し、異常検知・予防保全を実現するソリューションやその活用事例を紹介するセッションが用意されている。
「サービスマネジメント製品最新動向」のトラックでは、オープンソースのソフトウェア基盤「OpenStack」に関するセッションが注目だ。米国IBMは3月4日、同社のクラウド・サービスとソフトウェアすべてに、このオープンクラウドアーキテクチャを採用すると表明した。この方針表明は過去、IBMがLinuxのオープンソースにコミットした際と同様、大きなインパクトを与えており、米国のPulseでも非常に注目された内容となっている。
「セキュリティー」のトラックでは、今年も「IBM セキュリティー・コンファレンス」が同時併催。まず最初の講演は、基調講演の位置づけで、セキュリティー戦略やセキュリティー・インテリジェンスのアプローチ、IBMのセキュリティー研究機関であるX-FORCEによるレポートについて語られる。続いてビッグデータ・セキュリティーに関するセッションがある。これまではセキュリティー侵害を検知するため、ログやイベントアラートなど、いわば氷山の一角しか見ていなかった。今後はリアルタイム監視、コンテキストを認識した検知、自動化された相関と分析など、インテリジェンスが求められる。それを実現するプラットフォームがQRadarであり、IBMではこれからアナリティクスの部分を強化したソリューションを続々とリリースする予定だ。その最新動向が語られる。
Pulse Japanは2010年まで「サービスマネジメント」中心のイベントとして開催され、東日本大震災を受けた2011年には事業継続も大きなテーマとなった。2012年からは「インフラの最適化」がテーマとして掲げられ、さらに本年は加えて「ビジネスの成果」が強調され、対象がIT関係者以外にも拡大されている。また、「インテリジェンスを活用したインフラの最適化」を実現するためのソリューションにフォーカスしている点もIBMならではの先進的な取り組みといえるだろう。
IBMでは「クラウド、モバイル、企業資産/社会インフラ管理、セキュリティーの4つのソリューションを統合し、グローバルに提供できるのはIBMだけ」と自負している。ぜひPulse Japan 2013に参加し、最新動向や今後の展望などについての知見を得ていただきたい。