社会・経済の成熟化に伴うモノの飽和、製造業のグローバル競争化に伴う製品の低価格化、情報通信環境の変化などによって、付加価値の源泉が「モノ単体」から「モノ+サービス」に移行しています。技術や品質で付加価値を提供してきた日本の産業界において、この変化は大きなチャレンジになっています。2回に分けてモノ+サービス発想のためのサービスデザインのポイントについてお伝えします。第1回は「モノ+サービス」進化の過程を整理し、第2回ではモノ単体発想からモノ+サービス発想へ移行するためのポイントについてお伝えします。
「ハード+PCソフト」から「ハード+PC+WEBサービス」の時代へ
「モノ+サービス」の製品開発の進化過程を確認してみましょう。この領域はこの10年間で、確実に成長し大きな進化を遂げました。
1. ハード+PCソフトの時代
モノにサービスを付加することで製品の付加価値が向上した最初の代表的なケースは、2000年代初頭に市場に登場する携帯音楽プレイヤーです。これらの製品は、それまでのハードウェア単体の製品に加えて、ソフトウェアやそれに付随するマーケットプレイスなどのサービスを付加することで、競争優位性を発揮し、既存製品にはなかった大きな付加価値を生み出しました。
これらの製品が登場した時代、まだスマートフォンもタブレットも一般的ではなかったため、多くのサービス・システムはPCとPC上で動くアプリケーションによって提供されました。例えばiPodでは、サービスプラットフォームとなるiTunesを利用するために、PCにアプリケーションをインストールする必要がありました。
2. ハード+PC+WEBサービスの時代
この状況が変化の兆しを見せるのは、2000年代半ばから後半にかけてWEBサービスが一般化した頃です。PCにインストールするソフトウェアに加えて、WEBブラウザでアクセスして利用する「WEBサービス」が一般化し始めました。
カメラメーカーが付加的なサービスとして、写真をWEB上にストックするためのストレージサービスを開発するようになりました。WEBサービスの領域はFlickrやYouTubeなどの汎用サービスの発展とともにユーザーの支持を得て、現在のクラウドサービスにつながる流れとなっています。

この記事は参考になりましたか?
- “生活革新イノベーション”のためのサービスデザイン連載記事一覧
-
- 「Empathy(=共感)」を起点にした“モノ+サービス発想”をデザインするプロセス
- 「モノ+サービス」発想のためのサービスデザイン-“進化の過程”から得られるヒント
- 「未来洞察」実践講義-得られた気づきを事業に活かしサービスをデザインする
- この記事の著者
-
岩嵜 博論(イワサキ ヒロノリ)
株式会社博報堂 コンサルティング局ストラテジックプラニングディレクター
博報堂において国内外のマーケティング戦略立案やブランドプロジェクトに携わった後、近年は生活者発想によるビジネス機会創造プロジェクトをリードしている。専門は、エスノグラフィックリサーチ、新製品・サービス開発、ビジネスデザイン、ユーザ...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア