クラウド化やアウトソーシング活用によって、ITシステムの運用管理業務は、自動化や効率化が進んでおり、保守・運用に携わる人材は、技術だけでなく顧客視点やサービス視点への変革を求められています。また、企業のITシステムをとりまく環境も仮想化やクラウドにより多様性、複雑性が増しています。このIT部門が抱える様々な課題をテーマに、数年来ITシステム運用の現場の改善に注力されてこられた株式会社スクウェイブ 黒須 豊 氏と、株式会社ビーエスピーソリューションズ 藤原 達哉 による対談を紹介します。
IT部門の本来の仕事とは

藤原 これからのIT部門は、外部環境の変化に強く、経営に貢献するサービス部門への変革が重要なのですが、現状、ITシステムの運用や保守に多くの要員やリソースが掛かっているという課題があります。BSPグループは、2012年から「運用レス※」というコンセプトを提唱、打開策として各運用に合わせたソリューションやサービスを提供しています。「運用レス」とはコードレスやペーパーレスのように機能の本質は変えずに、IT部門の業務の効率化や自動化を促進し、IT部門があるべき姿へシフトしていくための基本的な考え方になります。昨年発表した「運用レス2.0」では、IT部門の業務の価値分析を行い、マネジメントアプローチ、テクニカルアプローチによってITサービスマネジメントを実現するという要素を新たに加えています。加えて、事業拡大やイノベーションを起こすためには、ITサービス提供領域を広げることの重要性を提唱しています。
※「運用レス」とは、ITシステム運用部門が、ITシステム運用業務の合理化や効率化を求めながら、事業成長や経営に貢献するサービス部門へ変革していくためのメソドロジ(方法論)です。2012年よりBSPが提唱しています。
黒須 これまでITシステムの運用管理部門は、安定稼働や保守が優先と捉え、IT部門が果たすべき目的とかけ離れていたのは事実です。近年、ようやくIT部門として、「企業の事業目的への寄与を優先すべき」との考えにシフトしています。ITへの経営者の視点と、IT部門のそれとは明らかに違います。IT部門の責任者も、経営者の視点から見るべきでしょう。これに加え、ベンダーサイド、ユーザーサイドの視点もあります。ベンダーサイドは、運用における価値、工夫をユーザーに訴求したいと考えていますし、ユーザーサイドの視点もまた違っています。安定稼働、コストダウンなどは、正直やって当たり前なのです。IT部門は、運用業務が、如何に企業の事業目的達成に直接的ないし間接的に寄与しているのかを訴求できなくてはなりません、明確に訴求できない業務は価値が無いと判断されます。そういう観点で、運用レス2.0には注目しています。
藤原 確かにCIOやIT部門のマネジメントクラスの方は、経営側ではなくIT、システム側からの視点で見ていることも多いです。これは、利用者側の「システムのことはよく分からないから、IT部門でやってほしい」というITへの距離感に起因するところもあると思います。加えて、IT部門も利用者が分かる言葉で伝えていない訳ですから、距離は広がるばかりです。ためしに、IT部門の方へ「利用者にどんなITサービスを提供していますか?」とインタビューすると、障害対応とかバッチサービスとか、利用者に直接関係の無い表現がいくつも出てきます。ITILに「技術・サービスカタログ」、「ビジネス・サービスカタログ」の定義がありますが、これをベースに分析を行い、サービスの価値をどのように見せるかを、お客様に提案しているところです。
黒須 業種によっても見方が変わるところもありますよね。ITが企業のビジネスに直結するような場合と、社内の限られた部門や間接的なツールの場合では大きく違います。残念ながら、日本企業でITがビジネスの戦略的な差別化要素となりえる業界や業種の企業ですら、真の有効活用できていません。ITが自分たちの事業のどこに紐付いているのかという分析すらできていない企業も少なくありません。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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