クラウドプレーヤーの特性と戦略を理解し、特徴を見極めよ!
多くのベンダーがクラウドサービスを提供するようになり、ユーザーにとってはどのサービスを選べばよいか分かりにくい状況になっている。田崎氏はそんな状況について「それぞれの選択肢について◯や×で機能を評価していったとしても、このサービスを導入すれば間違いないといったものがない」状態だと話す。選択肢が多すぎて、機能やサービスを比較しただけでは、自社に相応しいサービスがどれかが分からなくなっているということだ。また、機能やサービスは日々進化するため、その時々で評価していても、適切なサービスは選べないということでもある。
そんな中、田崎氏はクラウドプレーヤーの特性と戦略を理解して、特徴を見極める必要があると指摘する。その際に考慮すべきなのが「キャリア・クラウド」だ。キャリア・クラウドというのは、「ネットワークを展開する通信事業者(キャリア)が提供する、クラウド・インフラストラクチャ・サービス(IaaS)のこと。米AT&TやVerizon、英BT、国内ではNTTコミュニケーションズやKDDIなどが提供するサービスだ。
クラウドサービスはどれも似たようなものと思うかもしれないが、プレーヤーごとに分類してみると特徴は大きく異なる。田崎氏は主要なクラウドプレーヤーを4つに分類し、どのような違いがあるかを説明した。
1つめは、AmazonやGoogleなどの「クラウド・ネイティブ」。規模の経済(スケールメリット)を生かし、先行者利益を得ているプレーヤーで、先進的な技術を持つ。2つめは、IBM、Microsoft、富士通などの「テクノロジー・プロバイダー」。顧客基盤を持ち、先端テクノロジーを提供するが、既存ビジネスとクラウドとのバランスをとりながらビジネスを行っている。3つめは「キャリア・クラウド」。広域ネットワークで規模の経済をはたらかせており、財務基盤や人的リソースが安定しているという特徴がある。4つめは、Eauinixやビットアイルなどの「データセンター事業者」。多くの場合、クラウドプレーヤーへの施設提供に集中しているのが特徴だ。
一般にクラウドサービスを検討しようとすると、ここでいう、クラウド・ネイティブやテクノロジー・プロバイダーにとどまってしまいがちだ。だが、キャリアという選択肢を加えると、選択の際の検討材料が増えることがわかる。田崎氏は、その点について「なぜキャリア・クラウドに着目すべきなのか」と問い、具体的に3つの理由を紹介した。
1つめは、スケール・ビジネスであることだ。ネットワークビジネスとクラウドビジネスは、先行投資により大規模なインフラを構築し、ユーザーに標準サービスを従量課金で提供する点で類似性がある。「こうした類似性は、実は、サービスや料金体系、サポート体制と大きく関わっている。これまでスケール・ビジネスに取り組んできたキャリアにとっては、クラウドのサービスや料金体系、サポート体制を構築することは、比較的容易だ」(田崎氏)という。
2つめは、ユーティリティサービスの提供能力があることだ。田崎氏によると、クラウドのポイントの1つは、水道やガスと同じようなユーティリティサービスであることだ。キャリアは、ネットワークのサービスをユーティリティとして提供する技術力、運用体制を培って維持してきたことに特徴がある。さらに、ネットワークのインフラも保有している。「クラウドにとってネットワークは重要になっており、そこのインフラと運営能力を持っているということが重要だ」(田崎氏)になるという。
3つめは、新たな成長へフォーカスしているかだ。これは、キャリアにとって既存のビジネス領域だけでは生き残れなくなっており、新規市場に注力せざるを得なくなっているかだという。
こうして分類してみると、選択肢にキャリアを加えるだけで、ビジネスモデルに親和性があるか、ネットワークサービスを提供できるか、長期的にサービスを提供していく要因があるかといった、新しい視点を持つことができるというわけだ。