「消費者とともにイノベーションを起こす時代」を予言する
コ・イノベーション経営の根底にある概念は、企業を中心とした価値創造から、消費者と一緒になって新しい価値(経験価値)とイノベーションを実現する「価値共創(コ・クリエーション)」の時代の到来を示唆するものです。さまざまな切り口と多くの企業事例が、丁寧に説明されていますので非常に説得力があります。
事例の1つとしてヘルスケア業界における心臓ペースメーカーと心臓疾患の患者との価値共創とそれを支える複数の関係者のネットワークが示されています(図1)。
この事例において、顧客としての患者が受け取る価値とは、プロダクトとしてのペースメーカーから生まれるのではなく、特定のタイミングでイベントや場所に関連した患者個人としての共創経験から生まれるものであると説きます。また、複数の企業(ペースメーカーをノード企業とする協働ネットワーク)が、この共創経験を実現するための環境を患者に提供していることを表しています。
このような時代への移行の背景として、1:テクノロジー融合とデジタル経済の進化、2:グローバリゼーションと規制緩和による業界や国境の垣根の低下、3:インターネットやソーシャルメディアの進展による企業と消費者間の情報格差の縮小などが挙げられるでしょう。