データベースへの目覚めはPostgreSQL
現在は後進の育成にも取り組むなど、会社ではいい先輩であり、データベースのスペシャリストとしてのロールモデル的な存在の渡部さん。勉強会にはよく顔を出していて、10月のJAWS-UG東京勉強会では偶然にも筆者と隣り合わせていたらしい(失礼なことに筆者は気づいていなかった)。
もともとはデータベースとは縁のない職場にいた。研究所勤務で、家電系のデモシステム構築などに携わったあと、SIでプロジェクトマネージャなどを担当していたそうだ。業務で紆余曲折しながら「向いていないな」と違和感があったという。
転機となったのは2006年4月。日本データベース学会とACM SIGMOD日本支部が共催した「とことんわかるPostgreSQLインサイド」というセミナーを聴講した。日本PostgreSQLユーザ会で中心的な石井達夫さんや坂田哲夫さんらがPostgreSQLの仕組みや設計を解説したセミナーだ。ここで渡部さんは「データベースとはコンセプトの観点でも実装の観点でも数多くの人類の英知が注ぎこまれた非常に重要なソフトウェアである」ということを感じ、「データベースって面白い」とデータベースにひかれるようになった。
このあたりから渡部さんの中で「スペシャリストになる」という目標が固まってきた。そして翌年、コーソルへ転職を果たす。渡部さんは「スペシャリストになる夢をあきらめきれなくて」と述懐する。
コーソルではOracle Databaseを中心としたサポート業務に就いた。渡部さんによるとサポート業務はスキルアップに非常に有効だという。なぜなら受託開発を行うようなシステムエンジニアだと「お客様の仕様決定待ち」や会議などに時間が費やされがち。また、必要とされるスキルも案件により様々だ。それに比べてサポートエンジニアだと会議は最小限で、特定の技術に関して細かいQ&Aから深刻なトラブルまで幅広く同時並行にこなすことになる。渡部さん曰く「濃密な時間を過ごせます」。スキルアップに専念できるという。
実際のところ、初めは余裕がなかった。渡部さんは「スペシャリストになると決めたのは自分ですが、それにしてもぱんぱんで」と苦笑いしながら、当時の多忙ぶりを振り返る。平日はサポート対応に追われ、まとまった時間がとれない。そのため週末には自宅に環境を構築して検証や研究を重ねた。
努力の甲斐もあり、渡部さんはORACLE MASTERの最高位であるPlatinumホルダーとなった。「プロとしてのOracleアーキテクチャ入門」、「プロとしてのOracle運用管理入門」という2冊の書籍を執筆し、こうした活躍などから日本では20人弱というOracle ACEにも認められた。さらに有志とともにJPOUG(Japan Oracle User Group)を設立し、11月のdb tech showcase 2013 東京の「特濃JPOUG」では「ブロック破壊と修復」という実に“とんがった”内容で発表したりもした。