顧客とのつながりを通じてプロフェッショナルとして成長した
何が伊東清音さんをIT業界に招き入れたのだろう。理系(建築学科)にいながら「パソコンが苦手」で、実習ではCADを使わず紙に線を引いていたほどのアナログ人間だ。
就活でIT業界は眼中になかった。しかし就活サイトでアシストのビル・トッテン社長(現在は代表取締役会長)の和服姿を目にして興味がわいた。サポーター(入社までの面倒見役)として現れた先輩社員は「ぼくはデータベースの王子様です」と自己紹介しはじめて度肝を抜かれた。周囲に確認すると「佇まいがきらきらしていた」と、本当に王子様のような人だったそうだ(現在は退社)。
トッテンさんと先輩社員のインパクトがあまりに強かったのだろうか。「ITの会社だけど、受付でもいい」と思い、応募することに。採用枠が技術職のみだったことに気づいたのは内定後だったとか。予想外の技術職に戸惑いながらも、入社後に落ちこぼれることはなかった。最初からデータベース担当。先輩たちが丁寧に教えてくれたためだ。
入社して3年目、初めて顧客へのシステムリプレイス提案プロジェクトでメインを担当した。顧客に背景をヒアリングし、提案書を作成。コンペだったので、採用されるかどうかの緊張感も経験した。無事に採用が決まった。
伊東さんは「導入作業の手伝では気づかなかったお客様の思いがわかり、(自分の仕事は)ただシステムを作るだけじゃなかった」と気づいた。「データベースのプロとしてできる。やっていける」とプロとしての自覚が芽生え、視座が上がった瞬間だった。
その後も顧客のプロジェクトを着々とこなしていった。上記プロジェクトで導入したシステムは問題なく稼働し続け、2019年の更改では再びアシストの提案が採用された。担当は後継者に変わったものの、あいさつに訪問した時のことを伊東さんは「お客様とのつながりを感じました」とうれしそうに話す。
見た目も話し方も「ほんわか」していて、癒やし系。仕事でもあまりストレスを自覚することはないそうだ。顧客相手の仕事だと嫌な思いもありそうだが、「クセのあるお客様のほうが面白いです」と伊東さんは笑顔だ。顧客から難題を突きつけられようと、顧客が身内でケンカを始めても伊東さんは平和的に接している。
むしろストレスになるのは自分の仕事のコントロールのようだ。焦るのは「早くあっちの仕事に取りかかりたいのに、こっちが終わらない」という時。やりたい仕事があるということは仕事への積極性や熱意があるということだ。
意外な側面もある。実は入社当時は痩せの大食い。「お寿司が大好きで」と穏やかに言うも、「最高で136貫」とあっさり。なんと。わんこそばは222杯。「200杯で苦しくなったけど、きりがいい数字まで行こうと思って」。できてしまうのがすごい。飯田橋のジャンボ餃子(2.5キロ)も完食して記念品もゲット。もうフードファイターの域だ。最近は仲の良い人たちとお酒を飲みながら話すのが、気分転換になっているという。