データベースに限らず、オープンソースソフトウェアが発展するかどうかはコミュニティ次第とも言える。PostgreSQLコミュニティには今でも古くからの開発メンバーが健在だが、若手も加わっている。PostgreSQL開発を本業とするために転職した澤田雅彦さんのこれまでと現在の働き方についておうかがいした。
テレワークでPostgreSQLのサポート業務と開発を続ける日々
コロナ禍で生活が激変している。通勤をやめてテレワーク、外食をやめてテイクアウト。会社や職業を変えた人もいる。全く影響を受けていない人はいないだろう。
ところが、このコロナ禍でほとんど変化なく、粛々と仕事を続けているデータベースのプロがいる。2ndQuadrantで働く澤田雅彦さんだ。2ndQuadrantはイギリスに本社を置き、PostgreSQLの技術サポートを提供している。PostgreSQL本体の開発ができるエンジニアを雇っているため、PostgreSQLを支える重要な企業の1つでもある。

2ndQuadrantはイギリス、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、フランスなど多くの国で事業を展開しているが、世界各地にいるベストな人材を見極めることをポリシーとしている。そのため、澤田さんを含む何人かの社員は日本に住んでいて、テレワークで働いている。
ロボット開発を通じてプログラミングの楽しさに目覚める
学生時代にさかのぼってみよう。澤田さんは情報を専攻し、研究室では小さな二足歩行ロボットの開発に携わった。モーター制御やカメラ映像を解析するためのプログラムを書くことでプログラミングの楽しさに気づいた。ほかにもネットワーク方面に興味があり、ルーターを操作することもあったそうだ。
「データベースは?」と聞くと、まだそんなに興味はなかったらしい。データベースの授業も取っていなかったほどだ。
就職活動では「公共に関わる仕事をしたい」と考え、NTTデータに就職した。道路など公共インフラとITで関わるところが魅力的だった。もともと広く多くのために役立ちたいという意向を持っていることがうかがえる。
大企業なので同期は500人。その中でただ1人、オープンソースのデータベースに関連するチームに配属された。まずは全文検索の開発プロジェクトから仕事を始めた。当初は「なぜデータベースが必要か分からなかった」ところからのスタートだったものの、「こうやって動くんだ」と、学ぶことは楽しくどんどんデータベースの知識を吸収していった。
チームは少数精鋭で、NTT OSSセンター経験者などオープンソースの専門家が多くいた。なかでも先輩の藤井雅雄さんは憧れの存在だった。藤井さんはPostgreSQLのストリーミングレプリケーションなどの開発に携わり、今ではPostgreSQLのコミッターを務めている。澤田さんは藤井さんについて「説明が分かりやすく、面倒見もよく、気遣いもしてくれて、エンジニアとしても人間としても尊敬します」と目をきらきらさせながら話す。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
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