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イノベーションを可視/加速化する「ビジネスアーキテクチャー」集中講義

「戦略の暴走」を阻止するビジネスルールとは?ビッグピクチャーとの関係で倫理観を考える

(第28回) 

 前回まで数回にわたり、モチベーションモデル内の手段としての戦略や戦術についてお話ししてきました。今回は、手段のもう一方の要素である指針について触れていきましょう。

素晴らしいビジネスモデルや戦略も、指針がなければ意味がない

 「ルールその①…絶対に損をしないこと、ルールその②…1つ目のルールを忘れないこと」
(投資家:ウォーレン・バフェット)

 ビジネス計画の論理的構造を表現するモチベーションモデルの最後の要素は、手段としての「指針(Directive)」です。指針には、「ビジネスポリシー(方針)」と「ビジネスルール(規則)」の2つがあります。まずは、手段の内部構造と指針の位置付けを見ていきましょう(図1)。

手段の内部構造
図1:手段の内部構造

 図のとおり、指針は行動方針(戦略や戦術)を統治し、成果(ゴールや目標)の達成を支援するという関係にあります。さらに、指針としてのビジネスルールはビジネスポリシーを基礎にするという関係にあります。

 もう少し分かりやすくするために、成果を「目的地」に、行動方針を「道路」に例えてみましょう。行動方針とは、成果の達成に向けて取り組む手段であったことを覚えていますでしょうか。指針とは、標識や信号、ガードレールや中央分離帯のようなものであることをまずはイメージしていただければと思います(図2)。

行動方針
図2:行動方針を道路に例えると..

 指針は、戦略や戦術といった行動方針に比べ、地味なイメージをもたれるかもしれませんが、日々のビジネス・オペレーションにとって不可欠なビジネス要素です。今世紀初頭に破たんしたエンロン社を覚えていますでしょうか? 同社は、素晴らしいビジネスモデルや事業戦略をもっていると世間から絶賛されていました。ところが、同社は遵守しなければならないビジネスルールを守らなかったのです(ルールがなかったのではありません)。これを「戦略の暴走」と呼ぶことができるかもしれません。指針は、このような戦略の暴走を阻止する働きをもちます。

 ビジネスモデルのイノベーションを実現するために、従来の慣習やルールを疑うことは必要です。しなしながら、企業をゴーイングコンサーンとして考えた場合、遵守しなければならないルールもあることは疑いの余地がありません。

次のページ
ビジネスポリシーとビジネスルールの定義

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

 ITコンサルティング会社所属。IT業界において20年以上にわたり、営業、事業企画、マーケティング、コンサルティングと幅広い役割に従事。2年前のある日、「日本のビジネスに光を!」という天からの啓示を受けて以来、ビジネス構造の究明と可視化に没頭中。好きな言葉は、「人生とは、別の計画を作るのに忙しいときに起こる出来事である。」(ジョン・レノン)Facebookページ「ビジネスアーキテクチャー研究ラボ」を運営中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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