仮想デスクトップ/アプリケーションの展開先インフラ
XenDesktopは仮想デスクトップ/アプリケーションを展開先インフラとして多様な選択肢を提供している。対応するハイパーバイザーとしてはCitrix XenServer、Microsoft Hyper-V、VMware vSphereに対応しており、特にXenServerについてはXenDesktopのライセンスに含まれるため、仮想インフラに対する追加投資が抑えられる。
さらに、書籍刊行後に登場した最新バージョンであるXenDesktop 7.5ではCitrix CloudPlatform powered by Apache CloudStackやAmazon Web Servicesなどのクラウド環境への展開も可能となっている。
仮想デスクトップの展開機能
仮想デスクトップ環境を構築・運用する際、仮想デスクトップを1つや2つ、手動でインストールしてセットアップする程度であれば大きな負担ではないが、数十・数百あるいは数千・数万という数のデスクトップを手動でセットアップするのは大変な負担となる。そこで、XenDesktopには仮想デスクトップを大量展開するのに便利なテクノロジーが用意されている。
Machine Creation Services(MCS)は、ハイパーバイザーによるクローン機能を用いて、マスターイメージから仮想マシンを展開するテクノロジーである。管理者があらかじめマスターVM上でOSやアプリケーションのセットアップを行い、それをベースに多数のVMを展開する。
展開された仮想マシンは、OSやアプリケーションを格納した「マスターイメージ」と、データを書き込むための「差分ディスク」、これらの紐づけを行うための管理情報を格納した「Identity Disk」の3つを組み合わせて、仮想マシンのゲストOSからは1つのハードディスクとして認識する。仮想マシンを大量に展開するとストレージに対するI/O負荷が高くなるためストレージの性能やサイジングには注意が必要だ。
Provisioning Services(PVS)は、ネットワークを介して「vDisk」と呼ばれるディスクイメージを配信するテクノロジーである。PVSを使用するにはPVSサーバーの構築が必要となる。このテクノロジーの特徴は、「ネットワークインストール」ではなく「ネットワークブート」である点だ。
PVSサーバーはターゲットデバイスに対して、vDiskのデータをオンデマンドで配信するため、必要以上のネットワーク負荷は発生しない。たとえば、OSを起動するときであれば起動に必要なデータのみが配信され、アプリケーションを起動するときであれば、アプリケーションの起動に必要なデータのみが配信される。また、一度読み込んだデータはPVSサーバーのメモリ上にキャッシュされ、ストレージに対するI/Oが大幅に削減されるため、大規模なXenDesktop環境には欠かせないテクノロジーである。
MCSとPVSの詳細については当連載の第2回でも紹介する予定である。