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自動化が進むとシステム管理者は淘汰される?
吉田:パネルディスカッションでは、パネラーの皆さんに同じ質問をするのではなく、各人の特性に応じて質問をしたいと思っています。まずは自己紹介をお願いします。
田辺:私はシステム部門の人間ではありません。建築部門の業務改革担当です。具体的には2003年から三菱商事様の建設業向けのプライベートクラウドを採用し、アナログでやっていた業務をクラウド上に乗せていくという仕事に従事していました。2012年には現場で図面などを閲覧でき、プライベートクラウドの利用を更に加速させる「Field Pad」というiPhoneおよびiPad向けアプリを開発し、一般販売しました。同アプリは社員に加え、当社の取引先、さらには取引のない方々でも使えます。
大場:私は今年の1月にいわゆるクラウドソーシングと呼ばれる仕事のマッチングサイトを運営するクラウドワークスに転職するまでは、2社を経ています。最初に就職したのはSIer。そこで約10年間、エンタープライズ系システムやクラウドのサービスの開発に従事しました。2010年にソーシャルゲーム会社のグリーに転職。グリーではグリーで働くエンジニア向けに、開発を効率化するツールの開発を行っていました。私の場合はエンタープライズとWeb系、企業規模も1万人クラスの大企業から、現在のような10人のベンチャーまで、いろいろ経験しています。エンタープライズ系とWeb系、大企業と小・ベンチャー企業、これら双方の気持ちがわかる存在として呼ばれたのではと思っています。
吉田:ところで、システム管理者の会はご存じでしたか。
田辺:私はIT系ではないので、全く知りませんでしたね。ただこういうエンジニアが集まるイベントに呼ばれることがないので、イベント当日が楽しみですね。ITも好きですし。実は中学生の時はプログラミングをしていましたから。クラウドに預けるまでは、ドメインを取得して、自宅でサーバを立てて管理していました。だから家族のメールは独自ドメインなんですよ(笑)。
大場:私も知りませんでした。システム管理者と聞いてイメージするのは、サーバ管理業務やオペレータなどの作業員。自動化が進めばなくなる職種だと思います。これを機会にシステム管理者の日がなくなるまで、興味深く見守っていきたいなと(笑)。
コミュニティ活動でキャリアアップ
吉田:システム管理者も従来のイメージと変わっていかなければ、大場さんの言うように淘汰されていくと思います。ではどう変わればよいのか。例えば田辺さんのようなイノベーターにどうすればなれますか。
田辺:人がやることにはノウハウに個性がかけ算されます。だから現実的に同じ人間を育成することはできないというのが答えですね。ただイノベーターを育成する一つの解として提案したいのが、「Innovation Cafe」です。これは7月17日から始動する企業内イノベーターとして成長するための異業種コミュニティです。私も実行委員を務めています。
大場:私がコンピュータシステムの開発の方法を学んだきっかけは、Meadowという宮下尚さんが開発したオープンソースソフトウェア(OSS)のコントリビューターとして参加したのがきっかけなんですね。SIerで行われるシステムの開発手法は建築業界のやり方を非常に参考にしていて、システムをまるで建築物であるかのように作ります。たとえば最初に住みたい家を定義して、それに合う設計をし、資材を集めて作っていくようなやりかたです。しかし、ソフトウェアには建築物とは大きく異なる「目に見えないもの」という特徴があって、同じようなやり方では必ずしもうまくゆきません。完成したシステムは、最初に想定したものとは違ったモノができてしまうことが多い。一方、2社目のグリーでは「何を作ればよいか」という答えがなく、開発の指標は、ただユーザーがどうすれば喜んでくれるかなんです。ユーザーファーストの開発です。クラウドワークスも同様で、答えは用意されていない。しかも開発はアジャイル。これはOSSの開発手法に近いんです。もし僕のような人材を作るとすれば、OSSのコミュニティに参加することをおすすめします。
吉田:OSSのコミュニティに入るのに、ためらいや怖さは感じなかったんですか?
大場:東京に出てきたばかりで、誰も知り合いがいなかったんです。その寂しさ、ぼっち感を解消したいと思い、参加したので怖いという思いはありませんでしたね。宮下さんに初めてお会いしたときは、「捨てられた子犬みたいに仲間を求めていたよね」と言われましたが…。
吉田:お二人とも、コミュニティ活動をされていますが、知らない人とでも話をするのは特に苦手ではないんでしょうか。
田辺:私は基本的に好きですね。元々好きだったとは思うのですが、職業柄というところも大きいと思います。例えば、当社では2003年にプライベートクラウドを導入しましたが、当時はクラウドという言葉は当然なく、だれも理解していません。そんな状況で自分が考えていることを実行するには、まずは人にきちんと考えが伝わるように話すことなんです。これまでいくつもの新しい試みをしてきましたが、そのたびに人に分かるように伝える苦労をしてきました。その結果、話すのが苦になるどころか、話し好きになったんだと思います。
大場:今の会社に転職してからは、いろんなところから講演の依頼が来るようになりました。ただ話すのは苦手なので、今回のパネルディスカッションもできればやりたくないぐらい(笑)。でも断ることはしません。
話すことは人に価値を与え、自分にも価値をもたらす
吉田: 苦手なのに、断らないんですね。
大場:自分の話したことに、価値を感じてくれている人がいることに気づいたんです。例えばインタビュー記事が掲載されると、意外に「いいね!」がたくさん押されたり。エンジニアリング以外の軸でも価値を提供できるのであれば、ぜひやっていきたいと考えています。
田辺:私も社内向けにはいろいろ話をしてきたんですが、社外の人にとっても価値があるとは思っていませんでした。大場さん同様、あるとき価値があることに気づいたんです。だから今回もエンジニアの方にどれだけ役立つ話ができるかわかりませんが、この話を受けさせて頂きました。でも社外で話すことは、自分がやってきたことが客観的に見られるいいチャンス。ぜひ、そういう機会があれば皆さんも断らずにやってほしいですね。
吉田:外で話をすることは自分たちの価値になると。
大場:例えばグリーでは自社のシステム構成やノウハウをどんどん公開するという方針でした。その理由の第一は、情報を発信したところに情報が集まってくるからです。第二にビジネスや技術開発のスピードを早めるため。OSSは会社の枠をこえてエキスパートな人たちと情報を共有しているから開発スピードが早いですよね。発表はこれが正解だというためのものではありません。情報を共有し、ほかから情報を仕入れるためでもあるんです。当社も組織が小さく、1社で提供できる価値は限られます。複数の企業と連携するためにも、どんどん情報発信していく方針です。
吉田:大成建設ではいかがでしょう。
田辺:いち早くプライベートクラウドを構築し、社内だけでなく、社外の取引先とは、オープンな情報共有をしています。そういう意味でも情報発信には積極的だと思いますし、大場さんが話したように情報を発信しないと情報は集まってきませんから。
吉田:今回のイベントでは情報交換会も用意されているので、ぜひ新しい情報を集めるためにも積極的なご参加をお待ちしております。