コグニティブとアナリティクス
IBMはWatsonの成果を事業化しつつある。Watsonの名のもとでIBMが推進するのは大きく2つの分野がある。機械学習や自然言語処理などの成果によって、人間がおこなうような学習や推論をおこなう「コグニティブ・コンピューティング」、大量データを高度な統計処理によって知見の導出をおこなう「アナリティクス」である。前者はIBMのリサーチラボの基礎研究の長年の成果であり、自動応答システムとして、アメリカのクイズ番組「ジョパディ!」に出演しグランプリチャンピオンを得たことで有名になった。後者は、統計分析ソフトSPSS、BIツールのコグノス、DWH製品のネティーザなど近年次々に買収し築いてきた企業による、ビッグデータの解析技術の体系だ。
基礎研究と買収、この2つの成果をIBMはWatsonという名で括り、新たな事業戦略に取り組んでいる。以前からIBMのイベントでWatsonが紹介されることはあったが、それは前者のクイズ番組で優勝した人工知能のトピックとして語られ、製品化はまだ先という印象があった。しかし、今回ラスベガスで開催されたInsight2014では、コグニティブとアナリティクスを今後提供する上で、Watsonが“現在の”ビジネスとして語られたのだ。 今回のInsightは、初日にクラウド型データベース製品群の紹介、2日目にはWatsonアプリケーション、3日目にはTwitterとの提携の発表というサプライズがあった。一見ばらばらに思えるこれらの製品サービス群や、ここ数年の買収は、Watsonというシナリオを置くことで全体像が見えてくる。それは、単にアナリティクス製品をWatsonブランドで売っていくというマーケティング戦略ではなく、Watsonというエコシステムをつくるという事業構想のようである。
「チェスの名グランドマスターは盤面からパターンを読みます。優れた医者は患者の症例から治療方法を、弁護士であれば膨大な判例を参照します。膨大なデータや事実を収集し、バイアスを正し意志決定をおこなう。このような専門家の知見を、Watsonは人々に与えることができます。自然言語を理解し、数億の文献を読み、非構造化データを数秒の単位で分析し、わたしたちの意志決定を助けます。知見の民主化、イノベーションといえます。」
こう語るのはWatsonグループのシニア・バイスプレジデントのマイク・ローディン氏。
彼の進行によって、Insight12014のジェネラルセッションではIBMのWatsonアプリケーションとして3つが紹介され、それぞれのデモがおこなわれた。