プライバシーフリークカフェが本になります!
「プライバシーフリークカフェの記事にはとても重要そうなことが書いてありそうだな…」とわかってはいても、あまりの長さに辟易し、「あとで読む」「長い」「くどい」などと思っていた方、この機会にあらためて、じっくりねっとり、プライバシーフリークの世界を体験してみませんか?
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「見えないと人は余計なリスクを感じる」
山本 はい、ということで後半戦の最初は、いま物議を醸しておりますオモシロ動画について、ぜひお話を。
高木 オモシロ動画。
山本 オモシロ動画。あの、とあるサービスの広告がお披露目になっていまして。「屋上で目隠し」という…
高木 なんかこういう宣伝の動画がありまして。
山本 ぜひ、みなさんと鑑賞したいと。
高木 まず、ギョッとする映像から入ってきて、実験に参加させられる人たちが出てきます。
山本 いいですねえ。不安な表情ですねえ。
高木 これ何だったかっていうと、ですね…
高木 遺伝子検査…? 遺伝子検査の宣伝なんですよ。
山本 某Y社さんの。
高木 そうですね。ちょっとよくわからない広告だったですよね?
山本 ええ。よくわかんなかったですねえ。
高木 なぜか消えてしまいました。
山本 さすがにあの内容でしたし、批判殺到で消えてしまいましたねえ。
高木 今や残念ながら見れないんですが、なんなんですかねえこれ。言っていることはですね、「屋上で目隠し」。
山本 ええ。
高木 「まっすぐ進め」
山本 うん。
高木 「不安と恐怖の実験が始まる」
山本 ですねえ。これ単体だと面白いんですけどね。
高木 この実験が不安なんですかね?(笑)
山本 そうだと思います(笑)
高木 これ、実験だって言っているんですよ。
山本 いやあ、ねえ。
高木 遺伝子を分析してあげますよ、と。で、遺伝子情報は分析機関が研究目的に使用しますっていう規約になっているので、確かに実験なんですよね。モニターに無料でやってあげますよ、と。その代わり、2年以上、自分の健康状態についてモニターとして報告しなくちゃいけないっていう、すごい大変なやつですけれども。
山本 スーパー面倒な感じですよね。
高木 それが、「不安と恐怖の実験」なんですかね?
山本 いやあ、本当の意味で不安と恐怖の実験なんじゃないですかね。
高木 どうしたらこういう広告が作られるのか、よくわからないのですが(笑)。
山本 あの、まあ、思わず本音が出てたっていうか、その、「こういうサービスをやれば、こういう目隠しされない人を作れる!」ってやったと思うんですけど、まず、「お前らのやってる実験が不安じゃねえか」みたいなものが(笑)
高木 で、このCMを企画…
鈴木 プランニングした広告代理店が…
山本 そう受け取ったんでしょう。遺伝子が把握できず、人間として将来起きるだろうガンなどの疾病というリスクを知らずに生きる、それを表現するのに「目隠し」だ! と。で、「それ、いいね!」って言ったんだと思うんですよ。
高木 なんでそれ出しちゃうのかちょっと理解しかねるのですが。
鈴木 まあ、正直ですよね(笑)
山本 本当に彼らはそう思っているってことなんですよ。
高木 えー?
山本 かなり本気で、遺伝子サービスを提供しようとする某Y社さんは信じているはずです。遺伝子検査を行ってあなたの遺伝子的な特性がわかることによって、病気に対するリスクが判明し、その目隠しが外された状態になるはずですよと。
高木 うん。
山本 で、遺伝子的な疾患が起きる可能性というのを知らないまま生きていくということは、目隠しされたまま平均台を渡るのとおんなじですよね?ということを彼らは、代理店に説明したんだと思うんです。
高木 うーん(笑)
鈴木 でも、私は違うように受け止めて、「このサービスは、お前ら不安だと思ってんだろ」と。「ところが実際は大したことないぞ」っていう(笑)。
山本 そっちですよね。
鈴木 ええ、そう思って見たもんですから、「なんて正直なんだろう」と。
山本 たぶんね、わかってやってると思うんですよね。
鈴木 でも、これ実際は落ちるよね?何人かは。目隠ししたまま、ビルから。
山本 ええ、落ちると思います、ええ。
高木 あと私思ったのは、こういうシーンがあるんですね。
高木 目隠しされて、番号を振られているんですよ!
山本 いいですねえ。識別子ですね(笑)
鈴木 携帯とか、医療等IDとかね(笑)
高木 cookieで識別子を振ってですね、それで歩かせるっていうわけですけど…
山本 素晴らしいですね。生体実験に向かう戦争捕虜みたいで。
高木 見えないと不安だっていうキャッチフレーズなんですね。「見えないと人は余計なリスクを感じる」ですって。んー、これはあれですかね、プライバシーポリシーとかちゃんと書いてないと不安だっていう…。
鈴木 これは正しいですよね。嘘はない。
高木 これはむしろ、プライバシーフリークとしてキャッチフレーズに使いたい(笑)
鈴木 使いたいです。
山本 使いたいですよねえ。
鈴木 利用目的をもう少し詳細に、サービス単位で表示してくれ、と。わかってりゃ、不安じゃないから。守ってくれればだけどもね。
高木 「見えないと人は余計なリスクを感じる」。素晴らしい。
鈴木 素晴らしい。
山本 いい話ですねえ。
鈴木 ずっとやってりゃいいのにねえ。
高木 うん、残念ですね、消えちゃって。
山本 みんなでバカにしたからじゃないですかねえ。
鈴木 そうですねえ。