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ニッポンの個人情報のいま


 去る9月27日、翔泳社主催Security Online Dayにて行われたセッションにて1年ぶりに集結したプライバシーフリークの会。スペシャルゲストの招聘には失敗しましたが、ヤフーのプライバシーポリシー改訂の件から、EUにおけるパーソナルデータの考え方、顔識別カメラの万引犯共有の件まで、盛りだくさんのトークとなりました。

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山本 1年ぶりに戻ってまいりました、プライバシーフリークカフェ。

鈴木 もう解散したのかと思ってました。

山本 ちょっと今回はですね、演題未定のまま「ニッポンの個人情報のいま」みたいな仮題になっています。それもあって、ここ一年の動きや新たに取り組むべき課題について整理していくセッションにしようということで、高木先生から、最近の状況をざっくりお聞かせいただきたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

『ニッポンの個人情報』その後のことなど

高木 『ニッポンの個人情報』が出版されたのは去年の2月でしたね。あれからだいぶ世の中の認識も変わってきたように思えます。この本の内容も、もはや終わった話かなという気がします。どういうことが書いてあったかといいますと、まず、この「個人情報」っていう定義からして誤解されているという問題提起でしたね。それから、「他の情報と容易に照合ができ……」ってどういうことなの?と、そこの考え方を冒頭で示しました。出版時点では、個人情報保護法の改正法案がまだ出ていないときでしたので、どうなるかわからない段階で書いていました。「だまし討ちはいけないよね」とか、「漏洩、漏洩」って漏洩の問題ばかり言われるけどそうじゃないよねとか、そういう話に触れて、最後に「遺伝子検査のサービスとか出ているけどどうなる?」と、そういう内容でありました。

 その後どうなったかですが、今の状況を簡単に整理しますと、改正個人情報保護法が来年施行される予定で、その施行令と施行規則が、その案がパブコメにかけられて終わったところです。ただ、その施行令も施行規則も内容がないようでしてですね、大事なところが決まらないままという状態になっています。そして、個人情報保護委員会のガイドラインがさらに出ることになっていまして、近々パブコメが始まるのではないかというところ(注:本記事掲載時点ではパブコメが開始されており、11月2日締切となっている。)ですが、どんどん遅れに遅れている状況のようです。

鈴木 なんか一応、作ってはいるようですよね。ガイドライン案をね。まだオープンになっていないんですが。

山本 悩ましいところですね。

高木 そしてもう一つ大きな点は、医学系研究倫理指針とゲノム研究倫理指針の見直しが行われていることです。これは、法改正によって遺伝子データが個人識別符号に当たることになるので見直さなければと始まったのですが、実際はそれだけではないのですね。法改正を通じて、個人情報の定義とか容易照合性とは何かっていうのが確認されたことで、倫理指針もそこを間違えていたということになったのです。これまで誤った法解釈の考え方で運用してきたのを直そうと、根本部分の変更を成し遂げようとしています。これが今、パブコメ期間中で、10月21日が締切ですけども、これからどうなっていくのかというところですね。

山本 まあ、びっくりですよね。こういう変更があるとはちょっと予想していませんでした。

高木 『ニッポンの個人情報』で訴えかけていたことが、じわじわと理解が進んで、浸透していっているところかなと思います。

山本 おおむね望ましい方向という理解でよろしいですか? 

高木 ええ。そしてこれなんですけども、Yahoo! JAPANのプライバシーポリシーが、5月に大幅に改訂されました。これは本の中でも触れていた部分でありまして、……

山本 ヤフーといえば、我らがB……

鈴木 別所先生。

山本 私たち“プライバシーフリーク”のまさに「烏帽子親」として君臨されているわけですね。大変お世話になっております。せっかくですから、その別所先生にも実はこのイベントにお越しくださるように、お願いをしていたわけですけど、ちょっと残念ながら日程が合わずというかですね……。

鈴木 来てくれなかったですね。

山本 なんでですかね。

鈴木 残念ですね。もう何回目ですかね、オファーして。

山本 4連敗ですね。

鈴木 4連敗。今回はね、別所先生のことをほめようと。もう高らかにほめ上げようという趣旨ですからね。大丈夫だから、ご登壇お願いしますって申し上げたんですけども、だめでした。やっぱりおびき寄せて叩くんだろ、おまえらと思われたんでしょうかね。全くもって我々の不徳の致すところです。

ということで、今日はこのプライバシーポリシーを、ぜひ分析してみたいと思うんですけど。

高木 そうですね。その別所先生、先ほどの医学系研究倫理指針の見直しの合同会議ででもですね、大変素晴らしい発言をされまして、傍聴していてびっくりしました。

鈴木 議事録をみましたが、びっくりしました。「匿名性の定義からきちんと見直したほうがいいと思っています」とか、「提供者基準で個人情報の定義はされていますので」とか、「名前を外そうと、住所を外そうと、それは個人情報なのです。」とか、ほとんどこの本読んだんじゃないかっていう(笑)

別所委員

 多分、混乱が起きているのは、ゲノム情報そのものが個人識別符号になるかどうかということだけではなくて、その前の段階があって、実はここの対応表の有り無しが今まで、もともと議論1つのポイントになっていたのですが、対応表の有り無しが、意味がないということを、皆さんに御理解いただいたほうがいいのではないかと思っています。対応表が仮になかったとしても、もともとデータが特定の人についてユニークなデータだった場合は、その人の名前を外そうと、住所を外そうと、それは個人情報なのです。それは現行そうなのですね。ですので、対応表があるとかないとかで、個人情報に該当する、しないという概念が、個人情報保護法上ないのです。そういう誤解が既にあって、なので、仮にゲノム情報が識別符号に該当しないとしたとしても、ユニークな情報の集まりのものについて言うと、個人情報として取り扱わざるを得ないのだということを、まずそもそもの前提として御理解いただく必要があるのではないかと思っております。
 これは私が多分、解説すべきところではないのですけれども、保護委の方、もし間違っていたら、御訂正ください。

                        ―医学研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議 第3回 議事録より

鈴木 それで、最近、白別所先生と呼ぶようになっています(笑)。

山本 ついに別所先生、白くなってしまわれました。

鈴木 だからぜひ、今日も一緒に登壇していただいて、プライバシーフリークとして一緒にキセイを上げていただきたかったなっていう……

山本 …それはどういう漢字で書くキセイですかね……?

鈴木 うぎゃーの「奇声」ではなく「気勢」をあげる方ですけどもね。いずれにせよプライバシーフリークの会の仲間にはなっていただけなかった。本当に残念です。でも、意見は一致してきました。

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ヤフーのプライバシーポリシー改訂―がんばったところ、もうちょっとがんばってほしかったところ

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この記事の著者

山本 一郎(ヤマモト イチロウ)

1973年東京生まれ、1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産管理、コンテンツの企画・製作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。著書に『ネットビジネ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

鈴木 正朝(スズキ マサトモ)

新潟大学 大学院現代社会文化研究科/法学部 教授(情報法)。理化学研究所 革新知能統合研究センター 情報法制チームリーダー、一般財団法人情報法制研究所 理事長を兼務。 1962年生。中央大学大学院法学研究科修了、修士(法学)。情報セキュリティ大学院大学修了、博士(情報学)。 情報法制学会 運営委員・編集委員、法とコンピュータ学会 理事、内閣官房「パーソナルデータに関する検討会」構成員、同「政府情報システム刷新会議」臨時構...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高木 浩光(タカギ ヒロミツ)

国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報技術研究部門 主任研究員。1967年生まれ。 1994年名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。 通商産業省工業技術院電子技術総合研究所を経て、2001年より産業技術総合研究所。2013年7月より内閣官房情報セキュリティセンター(...

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