プライバシーフリークから新しい展開へ~一般財団法人情報法制研究所と新しい保護団体の設立
山本 その鈴木先生がですね、一般財団法人情報法制研究所を設立されました、おめでとうございます。
鈴木 なんかね、LINEの軍門に下ったかとかTwitterで書かれていますけど。
山本 LINEという悪の組織に…
鈴木 ええ。他にも大手広告代理店など、見る人が見れば、大変悪そうな組織になっていますが。そもそもプライバシーフリークと言われたような連中にですからね。そこに大事なお金をですね、海のものとも山のものともわからない段階で、最初にポンと資金提供をしてくれるというのは凄いことだと思います。
しかも高木さんがいるわけですからね。資金提供したら、そのお金でLINE攻撃がはじまることだってあるんじゃないかと。会社の中でも大丈夫だろうかと心配する声があったように聴いています。
山本 やっぱり揉めますよねえ。
鈴木 ええ。最終的には腹くくっていただきました。ほんとにアドベンチャーな企業だと思います。大変感謝しております。いただいた以上は、私たちの理想とするところに向かって、公共のために全力で活動していきたいと思っています。まぁそれなりにいろいろと率直に発言し、政策提言していく予定なので、いろいろ軋轢も起こるかもしれませんが、できる限り調整は試みますが、何事かを突破するためには空気読まずに行った方がいいことも少なからずありますからね。
山本 あり得ますよね。ケンカ売ってなんぼですよね。
鈴木 いずれにせよ、LINEさんからは設立費用等の面倒をみていただいておりますが、中立性はどうなんだというご意見をいただくこともありますが。そこは活動実績を見ていただくほかありませんし、運営しながら組織体制も中立性が担保されるように変更していかねばなりません。学術団体として公益財団法人化することも視野に入れておりますので。そのためにも賛同いただける企業会員、個人会員をだんだんと増やしていって、広く会費をいただくところで運営していきたいと思っています。
詳細は、これからホームページを作って、お知らせしたいと思いますが、理事の構成ですが、法学系からは東京大学教授の宍戸常寿先生、京都大学教授の曽我部真裕先生に参加いただきました。
情報セキュリティ系からは、立命館大学教授の上原哲太郎先生、名和利男さん、それから我らが高木浩光先生。セキュリティ界隈のトップレベルを呼ぶとなんとなくケンカになりがちなんですけれども、めずらしく3人、持ち味が違って融和しているという稀有な組み合わせになっております。
山本 わからないですよ。これから天上界の争いがあるかもしれないですよ。
鈴木 いや、守備範囲が違って面白いなと思うんですけど。それから元通産省貿易局長で現東大客員教授の奥村裕一先生にも理事になっていただいて、さらには、ITと経済学の分野に明るい九州大学教授の実積寿也先生、人工知能で小説を書く研究で有名な東京大学工学部准教授の鳥海不二夫先生も理事に加わっていただいて、まさに情報法だけではなく、学際的な研究ができる布陣をめざしました。
評議員には、東京大学大学院情報理工研究科の前研究科長の坂井修一先生に、顧問には人口問題研究所の所長をされている東京大学名誉教授の森田朗先生他の先生に、監事には、デロイト トーマツ リスクサービス(株) 代表取締役社長で公認会計士の丸山満彦先生に就任いただきました。
また、参与という運営のアドバイザを置いて、筑波大准教授の石井夏生利先生、弁護士の板倉陽一郎先生、日本大学教授の小向太郎先生、慶応義塾大教授の新保史生先生、関西大学教授の高野一彦先生、情報セキュリティ大学院大学の湯淺墾道先生に入っていただいて、情報法のコアな面々が集まりました。
そして理事長は私、鈴木正朝、専務理事はLINE(株) 公共政策室室長の、江口清貴さんが就任しています。オフィスは永田町に設置しました。まだ秘書1名の小所帯でのスタートです。
具体的な活動としては、理事会の下にタスクフォースがありまして、現在、活動はじめているのが、個人情報保護法タスクフォースで先般パブコメを提出したところです。これから、EUの一般データ保護規則を検討するEU情報法タスクフォース、オンライン広告タスクフォース、サイバーセキュリティ対策タスクフォース、2000個問題などを分析し対策案を検討する自治体情報法タスクフォースなどが立ち上がるところです。今後、研究員を委嘱して100名ほどで来年1月から本格始動になると思います。
山本 オンライン広告もやるんですね。ドキドキしますね。
鈴木 ええ。あと某会員企業さんからお金を出すにあたって言われているのは、消費者保護団体の有識者を育ててくれ、と。
山本 それはいままさに私どものほうでやろうと進めています。
鈴木 サイエンスベース、エビデンスベースじゃないところで、利用者、消費者の漠然とした不安だけでビジネスが止まるって社会にとって大変に不幸じゃないですか。
山本 まさにそれは特定方面から言われてですね、ついおととい、消費者庁からソーシャルゲーム関連のきっついお話があってですね。そのきっついお話というのはソーシャルゲームではなくて、そのソーシャルゲームの隣にいるパチンコ業界の額を打ち抜く内容だったんで、胸がドキドキしているんですけれども、それはそれとして、ぜひご期待をいただければなと思います。
鈴木 山本さんらは消費者保護団体を作るんですよね?
山本 その辺はもちろん頑張ります。はい。
鈴木 そうですね。一般財団法人情報法制研究所、略称JILIS(ジリス)といいますが、その設立にあたってLINEさんからの依頼は、事業者側から情報を提供するから、研究者と事業者が一緒になって、法律上のグレーゾーン解消のための研究会を開きたいのだと。政府見解が出て来ないなら、せめて研究者の中でしっかりとした通説を形成して欲しいということでした。一社のための理論武装ではなく、未知の論点について、それを放置するのではなく、法学的な考え方を示して欲しいと。
政府見解が見えない時に会社としてビジネスモデルを作ってチャレンジしていかなければダメなときに、エイヤで目をつぶって踏み出すのではなく、適法であることをしっかりと会社として説明責任を果たしながら進めていきたいと。それも一企業の考えではなく、そこは学界の通説的見解に従ったところで説明していくべきだろうと。ところが学界の方は最先端のビジネスの現状を知らない。検討材料となる情報を入手できない。これはまずいだろうと。だから場合によっては、守秘契約を結んで、内々の情報を踏まえて、検討し、著書や論文にまとめて発表していくと。これは学会の仕事としても重要なのではないかと。そうした活動のために、研究所と銘打ってタスクフォースを作りました。あとはもう1つオープンな研究会を運営していきたいと思いますし、学術団体としてジャーナルの発行も検討しています。年内にはだいたいホームページを立ち上げて、告知を進めていきますので、活動ぶりを見ていただいて大丈夫そうだなと思ったら、ぜひ会費を払って参加していただければと思います。
山本 お金ですか。
鈴木 まあ、みんな理事、参与、評議員、監事はみな無償労働ですから。活動予算が必要なんですよね。大学教員はいいとして、弁護士の板倉先生は仕事時間と睡眠時間削っての無償労働ですからね。
山本 個人的には「ざまぁみろ」としか思わないですが。
鈴木 いやいや、ここは他のところでいっぱいお金を稼いでいただいてですね。JILISでは、公共的問題にがつがつと取り組んでいただきたいなと。とはいえ、せめて各先生には交通費や講師謝金くらいはお支払いしたいじゃないですか。京都でもセミナーをやったりするもんですから。こうした活動を維持するためにもぜひ多くの企業や個人の方々には会員になっていただきたいと思っております。
山本 ということで、今後もぜひ、高木浩光自宅の日記にご期待いただければということで、今回のプライバシーフリークの会、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。