震災がバックアップの考え方を見直すきっかけに
――いま企業はどんなきっかけで、バックアップの見直しをしていますか?
佐藤さん:もっとも大きな出来事はやはり東日本大震災です。企業規模に関わらず、自社システムが震災のような災害でどう影響を受けるのか。復旧にはどうすればいいかを考えるようになりました。ミッションクリティカルで高可用性が求められるシステムは、高いコストをかけても保護する。一方で、今やクラウド上のサービスも稼動率は99.98%くらいはあります。それを誰でも安価に使える。クラウドにデータを置けば、国境を越え自動でレプリケーションもしてくれます。
まずはファイル、フォルダを保険的にどこか遠隔地に保存する発想が出てきました。もう1つがシステムを復旧するためのバックアップです。システムを元通りにするバックアップが、震災以降は格段に増えています。昔は、データは保護してもシステム復旧までは考えていなかったのです。そのころシステム全体のバックアップの話をしても、便利だね、役立つね、くらいでした。
今のデータバックアップは、システム的に拘るべきところでしっかりとやる。たとえばデータベースのバックアップなどはシステム復旧とは別にやります。つまり、システム全体のバックアップもデータのバックアップも両方が大事なのです。
――システムバックアップが出てきて何か変わることはありますか?
佐藤さん:データバックアップでは、バックアップをどう取るかを細かく設計できても、データを戻すところから後のことは設計しにくかった。そのため、ほとんどの中小規模の企業では、とにかくデータさえあれば何とかなるだろうという感じでした。それに対し、システムバックアップのゴールは、過去のある時点にまるまる戻ることです。言い換えれば、いつに戻ればいいかを考えます。1秒たりとも遡ることが許されなければ、バックアップではなく別の方法が必要です。
どの顧客も「どのくらいに戻ればいいのか」と聞けば「直近です」と答えます。企業やシステムごとに、この直近の時間は異なります。1時間あるいは10分となると、バックアップで戻すのは難しいでしょう。システム全体を戻すとなると、1日くらいが1つの目処となります。したがって、1日1回システムバックアップを取る提案をすることが多くなります。これは、夜間などシステム負荷が低い時にバックアップを取る運用とも合います。
とはいえ、現状はサーバー性能も高く、バックアップツールの処理が本番システムに及ぼす影響もかなり少なくなっています。そのため、必ずしも夜間でなければだめと言うわけではありません。なんとなく昼間は気持ち悪い、何かあった際の責任が取れないと言った理由から夜間でとなるようです。実際のところ、たとえばPC性能が上がっているクライアントバックアップならば、5分に1回のシステムバックアップでもあまり影響はありません。5分間隔だと、システム変更も少なくバックアップを取るべきデータも小さくなりますから。
専任のシステム管理者以外でも、確実にバックアップが取れる仕組みが必要
――その他には、ここ最近でバックアップに対する意識として変わってきた点はありますか?
古舘さん:バックアップを取る人が変わってきました。アクロニスの顧客であれば中堅・中小企業のシステム管理者や大企業の各部門の情報システム担当者が中心です。それが最近では現場部門のアプリケーション利用者もバックアップを取りたい。つまり、必ずしもITリテラシーが高いとは言えないユーザーがバックアップを取りたいのです。そうなると重要なのが、バックアップが簡単に取れることです。本業の合間の作業となるので、速さも重要になります。
佐藤さん:もう1つ変化のきっかけに、NAS(Network Attached Storage)の効率的な利用ができるようになったことが挙げられます。テープが主流の時代には、ストレージにバックアップを保存する際はローカルストレージに置いていました。あるいは、RAID構成でバックアップ代わりにするとか。ところが同じ筐体にバックアップを取っていると、いざトラブルがあった際に復旧できないことも多々あるのです。
それが手軽に使えるNASが出てきたことで、別の場所にバックアップデータを置けるようになった。それまで自分でテープにバックアップを取っていた意識の高い人にとっては、テープ装置をNASに入れ替えるだけでいい。それでNASの上にバックアップデータがあれば安心となったのです。実際はそのデータでうまく復旧ができるかは別ですが。
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