
これまで2回にわたり、バックアップを巡る企業のトレンドやソリューションについて紹介してきた。後編の今回は、企業がバックアップに対する認識を変える大きなきっかけとなった東日本大震災のような大規模災害に備えるにはどうすべきかについて、あらためて考えていこう。また、災害対策や事業継続を考える上でのポイントや、クラウドを活用した災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)の効率的な方法や注意すべき点についても解説する。今回もアクロニス・ジャパン セールスエンジニア マネージャの佐藤匡史さんと、リージョナル プロダクト マネージャの古舘與章さんに話を伺う。
堅牢なデータセンターは災害にも強い!
――2011年3月11日に東日本大震災が起こりました。この大規模な災害が具体的に企業の災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)にどのような影響を与えたのでしょうか?
佐藤さん:私は、2011年2月にアクロニス・ジャパンに転職しました。入社1ヶ月後にあの震災が起こることに。結果的に、入社以降はずっと災害への対策を訴求し続けています。そのため、震災直後から大規模な災害に対しバックアップはどうすればいいのか、アクロニスとしてどう貢献できるのか考えてきました。 当時は実際にサーバーなどの「モノが壊れた様子」を伝えると、ほとんどの顧客が反応し関心を示してくれました。実際に苦い経験した企業もあり、そういったところに改めてバックアップやDRがどういうものか、ビジネスを継続するにはどうしたらいいかを伝えています。バックアップを漠然と捉えてきた企業に、何を目的にバックアップするかをあらためて考えてもらいます。

アクロニスが主に対象としているのは、中堅、中小規模の企業です。DR、BCPが必要なのは分かっていても、実現にはお金がかかり自分たちが投資するものではないとの認識がほとんどでした。もちろん高価な対策はありますが、今はシステムバックアップの手法を使えば安価に災害対策ができます。最近では、具体的にどうやれば災害対策ができるのか、そのために何を導入すればいいのかという動きになっています。
実は震災では東京にあったITシステムはそれほど大きな被害は出ませんでした。特に大企業は、堅牢なデータセンターにシステムが置かれていることも多く被害は少なかったのです。一方で、中小企業は影響を受けやすかった。サーバールーム内で多重化しているだけでは、データを救えないこともあったのです。今やどのような企業も、ほとんどの情報を電子化して管理しています。それが大規模な災害時には、むしろリスクになってしまったのです。
たとえば、サーバールームが火災や津波などの水害に会い、サーバールーム内すべてのデータが壊れ復旧できなくなる。東北に支社がありそこにデータセンターがあった企業では、東京本社は被害がなかったのにデータセンターごとまずい状態になった例もあります。こういったことが切実に実感できたのが、先の大震災だったのです。
――具体的には、企業のどこの部署から動きが始まりましたか?
佐藤さん:状況はまちまちですが、反応が早かったのは会社の運営に携わる部署です。つまりは経営層に近いところ。彼らが「うちの会社の事業継続や災害対策はどうなっているのか。すぐに棚卸しをしなさい」と業務命令を出したのです。それをきっかけに社内のさまざまな部署が動き始め、まずは従業員の安否確認、災害時の通信方法の確保、商品の流通経路の確保などが検証されています。そういった棚卸し作業の中でもプライオリティが高いのがITシステムの稼働です。IT担当者に白羽の矢が立てられ、何かあった際にITシステムが止まらないか、データを保護して継続できるかの確認が行われました。
問題があればとにかくすぐに対策しろとなります。IT担当者は、何をすべきかがはっきりしない中、第一歩はバックアップでとなる。それをDRやBCPに発展させることになります。アクロニスでは、そのためにどうしたらいいかを具体的に伝えてきました。
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- この記事の著者
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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