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なぜ一変?WAFに対する市場評価が大きく変わった理由とは

”ハイプサイクル”と”マジッククアドラント”をどう読むか?

 「ガートナー」レポートで特に有名なのは、「ハイプサイクル」です。企業経営の意思決定に重要な資料であるだけに、簡単にそれについて紹介しましょう。

出所: Gartner's 2015 Hype Cycle for Emerging Technologies

 「ハイプサイクル(Hype Cycle)」は、特定技術の成熟度を視覚的に表現するためのツールです。当該技術の研究開発水準や市場の反応など様々な条件によって各項目を「(1)黎明期(技術の引き金:Technology Trigger)、(2)流行期(過剰期待の頂:Peak of Inflated Expectations)、(3)幻滅期(幻滅のくぼ地:Trough of Disillusionment)、(4)回復期(啓蒙の坂:Slope of Enlightenment)、(5)安定期(生産性の台地:Plateau of Productivity)」の5つに分類しグラフ上に表示します。

 (1)成長の可能性を秘めている技術に対する世間の関心が高まり、(2)概念-モデルへの過度な注目のおかげで製品も作ってみるものの、そのほとんどは失敗になり、(3)数多くの失敗でその関心が失われます。そこから生き残ったわずかの企業から成功事例が出はじめ、(4)利益を設ける製品が生産されることにより、再び注目を集め、(5)市場に一定のポジションを占めるようになり、品質を争っていく一連の過程です。ほとんどの技術がこのプロセスで進められます。

 世の中に新しい用語やキーワードが登場し、メディアでも話題になるものの、すぐ冷めてしまいます。激しい競争の中で、ごくわずかだけがやっと生き残り、成功していく過程がグラフから見えてきます。ハイプサイクルの変化像を参考にすると、複雑なIT業界の不確実性もある程度消えていきます。

 次は「ハイプサイクル」と同じくらい世界的に有名なグラフである「マジッククアドラント(Magic Quadrant)」について紹介します。ここでは、フロスト・アンド・サリバン(Frost & Sullivan)のグラフから紹介します。フロスト・アンド・サリバンは40年の歴史を持つ企業成長のコンサルティング会社。世界各国にある現地支社ネットワークを通じて、800人余りのアナリストから収集した情報を基に作成された市場分析レポートは、バランスのよい国際的視点と鋭利な解析力で高い評価を受けています。

出所: Frost & Sullivan's Asia Pacific Web Application Firewall Vendors 2015

 縦軸は現在の市場分布状況を意味し、横軸は将来に向いた成長戦略の優秀性と実行可能性を意味します。消費者の立場からは、アーリーアダプターの戦略にするか、レイトアダプターの戦略にするかなど、自社の意思決定基準により、グラフの4分割面上の候補群の位置と変化から異なるインサイトを得られます。もちろん、最終意思決定の段階ではなく初期検討の段階でそれを活用することが賢明でしょう。

 グラフ上の企業の位置は、売上、流通ネットワークの規模と品質、従業員数、特に開発者の数とそのレベル、販売、サポートといった各事業分野別における従業員の割合などによって決定されます。最終結果物が単純な絵の形になっただけで、その裏にはなぜこのようなグラフを描いたかその理由を説明する、読み終えるのが困難なほど分厚いレポートがあります。

 重要なのはグラフではなく、その分厚いレポートにあります。そのため、ハイプサイクルやマジッククアドラントなど簡単に描かれたグラフは、あまりにも忙しくてその分厚いドキュメントを読む時間のない役員などいわゆる「重役用のサマリー(Executive summary)」とみてもかまいません。

 ガートナーやフロストアンドサリバンなど、有名なコンサルティング会社のアナリストは、企業の実情を何も知らずただ机の前に座って難しい言葉だけを語っているわけではありません。現場の傾向を実質的に把握するための研究体制が充実していることも、業界を問わず彼らの分析結果を認める理由でしょう。

 経営陣はこれらのレポートを閲覧し沈思熟考したうえで、意思決定の過程でそれを参考にすると、大変役に立ちます。特にIT関連技術は、新陳代謝が非常に活発で常に変化しているので、一度見たから十分理解したと思ってはいけません。 定期的かつ持続的な観察が必要です。少なくとも毎年更新されるグラフだけでもみてみるとよいでしょう。

 実際に重要なのはある要素のグラフ上の位置ではなく、状況の変化によってその要素がどこからどこへと移動していくかです。つまり変化や、その変化の理由と根拠が重要です。最後にその一例として、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)について読み解いていきましょう。

次のページ
なぜ一変?WAFに対する市場評価が大きく変わった理由

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この記事の著者

DukSoo,Kim(キム・ドクス)

Penta Security Systems Inc. CTO(Chief Technology Officer)
1999年当社入社し、17年間データ暗号化ソリューションのD’Amo、WebアプリケーションファイアウォールのWAPPLES等当社のコア製品を手掛け、セキュリティ技術研究所の所長を歴任。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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