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連載開始にあたり―RFPはどれくらい重要か
RFP (提案依頼書) とは、情報システムの導入を考えるユーザ企業がベンダに対して、システム導入の目的や、求めるメリット、納期の希望や様々な条件等を伝え、それらを満足するシステムの実現方式や、金額、スケジュール、体制等の提案を求める文書です。言ってみれば、システム開発発注の入り口にあたる文書とも言えるものです。
私は、東京地方裁判所でシステム開発を巡る様々な法的紛争の解決をお手伝いしているのですが、トラブルプロジェクトの原因が、実はこのRFPの不備にあるというケースがかなりの数に上ります。
「この営業支援システム、肝心の顧客の購買履歴管理機能がないじゃないか。」
「そんな機能を開発するなんて聞いてないです。提案書にも書いてないですよね。」
「だって、このシステムの導入目的は、既存顧客の購買傾向から次に買いそうな商品を検索して紹介するってことだよ。購買履歴が必要だなんて、当然、分かってたはずじゃない。」
「でも、RFPには、そんな導入目的書いてませんでしたよ。ただ、個人顧客の売上向上ってあるだけで、だから、提案書にも要件定義書にも、購買履歴管理なんて書いてませんでした。」
「えー?依頼書に書いた、”個人顧客の囲い込み”っていうのが、それのはずだったんだけど。要件定義書の顧客管理っていう機能の中に、購買履歴管理っていうのが入ってたんじゃなかったの?」「知りませんよ。そんなの。どうしてもっていうなら、追加費用ですね。スケジュールも伸ばしていただかないと・・・。」
言葉遣いはともかくとして、こういうコントのようなやりとりが実際の現場でも行われており、その様子を記した議事録などが、裁判の時に提出される証拠資料などにも挙げられています。システム開発失敗の9割は要件定義に原因がある、などと言われますが、実際にはそのうち何割かは、とっかかりであるRFPにあるようです。
システムを導入するユーザ企業の担当者は、ヌケモレなく、書いた人間の意図を誰もが正しく理解できるRFPの書き方を知っておく必要があります。ちゃんとしたRFPを書くには、それなりに勉強も必要だし、なかなかに面倒な作業ではありますが、RFPは、それによって何百万円から数億円、あるいはそれ以上のシステム導入費用をドブに捨てることにもなりかねない重要な文書ですので、基本的なことだけでも抑えて、間違いのない、誤解を生まないものを作りたいものです。
というわけで、今回の短期集中連載では、私の開発プロジェクト経験や裁判所で見聞きした紛争の事例などを基に、より良いRFPを書く為のポイントを書いていきたいと思います。スペースの関係もあり、すべてを詳細に書ききるまでには至りませんが、経験上、特に失敗が起きそうな部分について、順次書いていきます。ご参考にしていただき、お役立てていただければと思います。