Oracle CloudはWindowsで.NETを使っている場合にも最適なアプリケーション基盤
谷川:市場にはOracle製品は「高い」との印象があります。Oracle Cloudのサービスが登場して、これは誤解だというのは本当ですか?
大田:はい、他のクラウドベンダーと比較しても高いコスト競争力を持っています。実際にOracleのほうが他社より安いサービスがいくつもあります。たとえばIaaSの価格を比べても、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureよりも安価な設定になっています。図を見てもらえば分かりますが、Linuxの環境ならOracleは1時間あたり10セントです。これはAWSやAzureと比べても少し安くなっています。
谷川:たしかにAWSよりも安いですね。Windowsはどうですか?
大田:WindowsでもOracleは1時間あたり10セントです。これはAWSの半分以下、Azureとの比較なら1/3です。RAMの大きさは、Oracleではあまりコストに影響がなくCPUのリソースだけを見ている感じです。
谷川:Windowsの10セントという価格は「Promotion Price」となっていますが、後から上がるなんてことはないですよね?
大田:この価格がいつまでというのは発表になっていません。プロモーション期間が終了しても、他社より高くなることはないはずです。
谷川:たしかに、Oracle OpenWorldのステージでCTOのラリーが他社とも十分に競争できるコストでクラウドは提供するのだと宣言していたので、このプロモーション価格は続くのかもしれませんね。少なくとも他社より高くなることはないのでしょう。
ところで、Oracleと言うとどうしてもLinux環境での利用が多く、Windows環境での利用はそれほど多くないのかなとも思ってしまうのですが。クラウド上で、Oracle製品とWindows環境の相性は問題ないですか?
大田:全然問題ないです。Windowsでも数多くのOracle製品が利用されていますよ。データベースをWindowsで動かす場合には、アプリケーションもWindowsで動かすことが多いです。その場合は、Active Directoryの認証を利用し、Windowsの上でVPNの設定を行い、アプリケーションサーバーにはIISを利用するなんて構成が多いでしょう。こういった組み合わせをクラウドで利用するのに必要な設定情報などは、すでにOracleからは提供しています。
日本オラクルの社内でもさまざまなWindows環境の構成で検証を行っており、その結果はセミナーなどでも紹介しています。これまでにセミナーに参加した人たちに話を訊くと、Windowsのクラスター構成でOracle Databaseを運用している環境も多く、そういったものにも対応できる情報を準備しています。Oracle Databaseに関する部分の技術情報だけでなく、Oracle IaaSで今後提供予定のロード・バランサー機能を利用してアプリケーションサーバー層を二重化してデータベースにアクセスするといったものから、Visual Studioを利用して作成したアプリケーションを直接Oracle IaaS上で動作しているWindows + IIS環境にデプロイする方法などインフラ向けの情報以外にも開発者向けの情報を幅広く提供していく予定です。
Oracle製品をクラウドのWindows環境で利用するための情報については、私が調べた限りではAWSのものもAzureのものも少ないようです。アプリケーションの実行基盤を構築しようとすれば、IaaSであっても基本的にはオンプレミスと同様な構築手順が必要です。Oracle Cloudの場合は、オンプレミスでもクラウドでも同じアーキテクチャとなっていますので、オンプレミスのノウハウが基本的にはそのまま活用できます。またアプリケーション実行基盤はIaaSのWindowsで、データベースはPaaSのOracle Database Cloud Serviceを利用するといった構成でも、PaaS用に特別な設定が必要になることはありません。
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PaaSのデータベースを利用するメリット
谷川:ところでアプリケーションはIaaSで、データベースはPaaSでという組み合わせは、すべてをIaaSで動かすよりもメリットはあるんですか?
大田:PaaSならデータベースのインスタンスを迅速に立ち上げられるメリットがまずあります。もう1つ大きいのは、従量制でデータベースを利用できるところでしょう。Database Cloud ServiceではIaaSのようにデータベースのライセンスを別途クラウドに持ち込む必要はありません。Oracle Databaseのライセンスを意識せずに利用できるのです。もちろん利用料にはサポート費用も含まれています。
谷川:なるほど、データベースをPaaSにすればさらにコストメリットを感じられると。じつは、昨年、Oracle Database Standard Editionのライセンス変更があった際に感じたのですが、OracleとしてはStandard Edition One(SE1)を利用しているようなカジュアルなデータベースユーザーは、PaaSのDatabase Cloud Serviceへの移行を強く薦めるのではと思っていました。ところがそのようなメッセージが、Oracleからは明確に出てこない。ちょっと不思議だったんですが?
大田:そういうメッセージを強く出せなかった理由の1つが、あの時点ではIaaSでWindowsをサポートしていなかったのです。IaaSでWindowsが正式にサポートされたのは2016年の4月からです。SE1を利用している場合にはアプリケーションがWindowsで動いていることも多く、そういう環境の移行先にOracle Cloudを選択してほしいと言いにくかったのです。
今ではSE1を使っているのならば、次の環境としてPaaSを1つの選択肢にして欲しいと明確に言えます。このSE1からPaaSへの移行については、出遅れを挽回するために、ISV営業部隊でも積極的に活動しているところです。
クラウド化でビジネスに付加価値を提供する提案を
谷川:ところでOracle Cloudを広く使ってもらうには、Oracleのパートナーの存在も大きく影響するのではと思います。現状、パートナーのOracle Cloudへの理解が今ひとつ進んでいないようにも思えるのですが。
大田:たしかに、私がパートナーと話をしていてもOracle CloudのIaaSでWindowsが利用できることを知らないこともあります。そのため、オンプレミスで.NETを使ってアプリケーション開発をしていたようなISVでは、アプリケーションをクラウド化するのにOracle Cloudは使えないと諦めていたようです。
今では、Oracle Cloudでの.NETによる開発も何ら制限はありません。むしろミドルウェアのOracle Data Provider for .NETを使えば、OracleでチューニングしているのでMicrosoftが出してるドライバーよりも性能が良くなっています。
さらには、オンプレミスで開発して、クラウドにデプロイすることも簡単です。そういった使い方をする際の技術情報ももちろん提供しています。その上で価格的にも優位性があるので、.NETを利用しているならば是非ともOracle Cloudを活用してもらいたいです。
また、クラウド化した際に十分なパフォーマンスを発揮するのにどうしたらいいのかといった技術的なサポートをする部隊も用意しています。さらに技術情報を提供するだけでなく、アプリケーションの内容やアーキテクチャを理解した上で、もっとも良いクラウド化の提案を行っています。たとえばクラウド化をする際に、Oracle Database 12cの機能を使ってマルチテナント化する提案も行います。マルチテナント機能を使うことで集約度を上げることができ、結果的にサービスの利益率を上げることにつながる場合もあります。さらには、クラウドに蓄積されるさまざまなデータを分析し、新たな付加価値のあるサービス展開なども提案しています。
このあたりは、Oracleがこれまでエンタープライズ領域で多数のビジネス経験してきたからこそであり、そのノウハウをクラウドでも提供してビジネス価値のある提案ができると考えています。これは、Oracleならではで他社にはなかなか真似のできないところでしょう。
谷川:安価なクラウド環境を用意し技術情報を提供するだけでなく、クラウド化することで新たな付加価値を得られるようにする。そういう提案をOracleはすると言うことですね。価格比較ではなく、ビジネス価値も含め提案できるところにOracle Cloudの強みがあると。これが市場で理解されれば、Oracle Cloudの利用拡大も加速しそうですね。
大田:もちろん単純な価格比較でも、Oracle Cloudを選ぶメリットは十分にありますから!
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