“ツンデレ”メタファによるエンタープライズ2.0の潮流や全体感の把握に始まり、「マッシュアップポータルによる3億円の利益創出」で経営との接点を解説してきたこの連載も今回で最終回。ベンダー発のブームが一段落した今、エンタープライズ2.0で企業が経験した2つの本質的変化を振り返り、来るべきクラウドコンピューティングの世界への橋渡しとなる変革の仕組みを説明します。
エンタープライズ2.0がもたらした2つの変革
ブログやSNSは表層でしかない
「エンタープライズ2.0」という書籍を筆者が執筆していたのは2007年春のこと。2008年秋になり、エンタープライズ2.0というbuzzワードを目にする機会はめっきり少なくなりました。しかし、中毒的ともいえるWeb2.0ブームに触発された一連の変革の流れが立ち消えになったわけではありません。本質的な変化はシステムを日々の業務で活用するエンドユーザーと、ITソリューションを調達・管理する情シス部門の両面で確実に起こりつつあるのです。
エンタープライズ2.0を表層的なITツール面だけで語る場合、SNSやブログ、RSSや検索エンジンを社内で活用するという認識が一般的です。これらツールベンダーはこぞって「エンタープライズ2.0の生みの親」たるHarvard Business SchoolのAndrew McAfee氏が提唱するSLATES※にのっとったソフトウェアを世に送り出し、企業内への導入を促進してきました。
Harvard Business SchoolのAndrew McAfee氏が提唱するEnterprise2.0的ソフトウェアが兼ね備えているべき要素。Enterprise2.0を特徴づける要素として、Search(検索)、Links(リンク)、Authoring(情報発信)、Tags(タグ付け)、Extensions(拡張性)、Signals(通知)の6つを挙げています。これらは、各々の頭文字を取り、SLATESと呼ばれます。
ITコンシュマライゼーションと並ぶ本質的変化。エクスペリエンスの潜在力
ツール論でのSNSやブログ導入などの具体的な取り組みを「表層的」と一蹴するのならば、その本質は何なのか? その答えとなりうるさまざまな要素は「ITコンシュマライゼーション」と「エクスペリエンス」という2つの現象に収斂します。
これら2つの本質的な変化が、旧世代の重厚長大な情報基盤に対する考え方を脱却し、次なる世代への移行を誘うものになるか、自滅へのトドメの一撃となるかは、企画や決裁に関わる皆様の、エンタープライズ2.0の本質に対する理解度と、組織への浸透度にかかっています。
連載第一回でご紹介したITコンシュマライゼーションと並んで、エンタープライズ2.0のかけ声と共に企業に浸透したもう一つのコンセプトは「エクスペリエンス」というキーワードでまとめられています。
ここでいうエクスペリエンスは、一見してカッコイイ画面や使いやすいユーザビリティのことではありません。誤解を恐れずシンプルに言い切るとユーザーの「慣れ」のことであり、活用されずに眠っていた埋蔵金的な側面があるのです。以下、企業内における埋蔵金発掘のコツを探ってみたいと思います。
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砂金 信一郎(イサゴ シンイチロウ)
マイクロソフトでクラウドコンピューティングやWebサービスを中心とした啓蒙活動を行うエバンジェリスト。過去のキャリアを活かし、ソフトウェア技術者とマーケター、さらに戦略コンサルタントの顔を使い分けながら啓蒙活動を展開。日本オラクルにおいて、ERPから情報系ポータル、新規事業立ち上げまで幅広く経験。その後、ドイツ系戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガーにて、自動車メーカーを中心に、各種戦...
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