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きちっと儲かるエンタープライズ2.0~Web新世代ための情報基盤構築ガイド

ツンデレでやさしく読み解くエンタープライズ2.0入門(前編)

第1回


 「エンタープライズ2.0」を「Web2.0」に続く単なるバズワードと考えてないでしょうか? 本連載では、単なる技術紹介にとどまることなく、エンタープライズ2.0の本質をビジネス視点で掘り下げることで、企業利益につながる活動として紹介してゆきます。まず第一回目は入門編ということで、エンタープライズ2.0の周辺で起こっている事象からみていくことにします(後編はこちら)。

今、現場で起こっていること

 Google Appsを導入したところ、想定外の反響に正直驚いたのはつい最近のこと。私の会社リアルコムは70人程度の組織ではありますが、先日メールやカレンダー、スプレッドシートなどを自社ドメインで利用できるGoogle Appsを全社導入しました。多くのメディアに掲載していただいたこともあるのでしょうが、皆さん興味はありながらも躊躇していらっしゃるようで、「実際のところ、どうなんですか?」という問い合わせをかなりの数受けました。

 ある企業に訪問した際、おきまりの「導入効果は?」という質問に「ひとりあたり6,000円程度ですから、自社運用の人件費を考えればまあそれなりです」と答えたところ「月額ですか? ちょっと高いなあ」と聞き返されたことがあります。

 ちなみに、もちろん年額です。

 この企業では、お抱えの情報子会社がパッケージベンダー製品をゴリゴリにカスタマイズした情報共有基盤を月額6,000円に近い金額で利用させられているようです。仮に5,000円/月だとして年額60,000円。Google Appsの実に10倍のコストです。

 ここまでお読みいただいて、「まあ社内のメールならこの値段でもあり得る話だよね」と感じた方、「なんでメールなんかに60,000円も払っているんだろう?」と感じた方、それぞれいらっしゃると思います。今、世界中の情報共有基盤を企画・構築・運用する現場では、このような価値観の相違がいたるところで起こっています。

Googleが推進するコンシュマライゼーション

 このような事態を引き起こしているGoogleはどのように考えているのでしょうか? 弊社とも協業関係にあるGoogleジャパンのエンタープライズ事業のご担当者は、「メールやカレンダーはすでにコモディティ化している」という発言をよくされています。事実、弊社がコンサルティングの中で意見交換をさせていただくCIO(最高情報責任者)の方々も「セキュリティはちょっと気になるが、メールやカレンダーははっきり言って何でもよい」とお考えの方々が増えてきています。Google Appsを導入した我々からしても、正直、面倒くさくなくて安ければそれでよかっただけなのです。

 このGoogle Appsに限らず、Googleがやっていることは、従来「こだわり差別化ポイント」と思っていたサービスを、圧倒的なエクスペリエンスの普及力であっという間にデファクトスタンダードをつくりあげてしまい、コモディティ化させる活動といえます。

 元々ビジネスとして成り立っていたメールやカレンダーのソフトウェアをコモディティ化してしまうことはGoogle自身の首を絞めることにはならないのでしょうか? と考えてみると、業界全体の構図がみえてきます。

 IT系というざっくりとした括りの中で誤解されている方々もいらっしゃると思いますが、Googleは広告代理店であり、SaaSベンダーでももちろんソフトウェアパッケージベンダーでもありません。Googleをライバル視している最右翼のマイクロソフトも、検索ポータルや無料メールサービスなどを展開していますが、守るべきドル箱の既存ライセンスビジネスがあるので、現時点では大胆な手が打てない状況にあります。これはオラクルもIBMも同じです。Googleはライバルになりうる大手ITベンダーが身動きがとれないことをわかっているから、我が物顔で世の中を騒がせることができているのです。

 シスコの急激な成長は、自社での研究開発を減らしてM&Aによる積極的な技術吸収にあったといわれています。現在でも有り余る資金力を元にオラクルやEMCが同じような手法を用いて買収を繰り広げていますが、これらは製品を作り上げるコストサイドの変革でしかありません。

 Googleにはマーケットのあり方そのものを変える破壊力があります。圧倒的なOS・オフィス製品のシェアに基づく戦略を展開しているマイクロソフトを目の敵にしているソフトウェアベンダーは少なくありませんが、業界全体をゆるがす本当の脅威はGoogleなのです。しかしながら、多くのソフトウェアエンジニアには何故か非常に好意的な印象を持たれており、羊の皮のかぶり方は非常にうまいといえます。

 彼らがオオカミになったとき、これまで年平均成長率10%程度で伸びてきたメッセージング&コラボレーション市場をはじめとする企業向けソフトウェア産業が突然消滅する可能性は否定できません。

次のページ
コンシュマライゼーションによるパワーシフト

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この記事の著者

砂金 信一郎(イサゴ シンイチロウ)

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