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「ハイパーコンバージド・インフラは目的ではない」Nutanix創立者、CEO ディラージ・パンディ氏

 調査会社などの数字を見ると、PCサーバーやUNIXマシンなど、企業のサーバーハードウェアへの投資意欲はかなり下がっている。各種クラウドや顧客管理、データ分析などのソフトウェア、セキュリティ対策などへのIT投資は現状維持かプラスの傾向があるのに対し、汎用サーバーを新規に購入する企業は今やあまりいないのが現状だ。ハードウェアの中でもストレージはビッグデータの追い風、新たなフラッシュストレージへの移行などもありまだ堅調だが、サーバーのビジネスは今やかなり厳しい冬の時代と言える。そんな中、厳しいサーバービジネスの中でも一人気を吐いているのがハイパーコンバージド・インフラストラクチャだろう。

ハイパーコンバージド・インフラストラクチャは目的ではない

 汎用サーバーを購入し自分たちでセットアップをする企業は少ないが、購入すればすぐに利用でき、拡張性と柔軟性がありネットワークや仮想化サーバーの設定まで、すべてが実装済みの環境であるハイパーコンバージド・インフラストラクチャを導入する企業が増えている。

 そんなハイパーコンバージド・インフラストラクチャの市場が活性化しているのは、ベンダーサイドの動きにも現れている。2017年1月17日には、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャのソフトウェアを提供している専業ベンダーSimpliVityをHewlett Packard Enterprise(HPE)が6億5,000万ドルで買収すると発表している。

 HPEは分社後、ソフトウェア関連資産を軒並み売り払ってきた。残ったのはサーバーを中心とするハードウェアだけという状況に端からは見え、これから一体どうビジネスを展開するのかと見守っていた矢先のことだった。そんな中で今回の買収は、HPEのハイパーコンバージド・インフラストラクチャのビジネス強化の兆候と見て良さそうだ。

 そして、このハイパーコンバージド・インフラストラクチャの世界で、リーダーと言える存在の1つがNutanixだろう。同社は2009年に創業し、すでに世界80カ国以上に4,473社を超える顧客を要している。

  日本でもパナソニック、北海道銀行、ヤフージャパンなど300社を超える企業が、Nutanixのハイパーコンバージド・インフラストラクチャをすでに利用している。

米国Nutanixの創立者で代表取締役会長 兼 CEOのディラージ・パンディ氏

米国Nutanixの創立者で代表取締役会長 兼 CEO
ディラージ・パンディ氏

 来日した米国Nutanixの創立者で代表取締役会長 兼 CEOのディラージ・パンディ氏は、1990年頃に米Oracleが日本の市場に歩み寄りその後に成功したという事例を引き合いに出し、「日本は特別な国。日本からさまざまなことを学びたい」と語る。

 パンディ氏は、エンタープライズITの状況を理解していく中で、データが力を発揮していることが分かったという。そしてデータを活かすには、ハードウェアベースのアプローチからソフトウェアベースのアプローチにすべきだと考えた。その考えから、ストレージの技術を開発して、専用のストレージハードウェアがなくても拡張性の高いインフラを構築できるハイパーコンバージド・インフラストラクチャが生まれたのだと説明する。

 とはいえ、「ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ自体が目的ではありません。これは、真のエンタープライズクラウドを展開するための1つの手段であるに過ぎません」とパンディ氏は強調する。

 当初は、ITインフラの中で仮想化部分とストレージが別々の予算で構成されていた。それでは良くないと、ハイパーコンバージドで1つのプロダクトになり機能も予算も1つに統合化された。そうやって生まれたハイパーコンバージド・インフラストラクチャは、一般には柔軟性の高いインフラの実現として、それ自身が目的と考えられがちだ。

 しかし、現状のハイパーコンバージドはまだまだ十分なものではなく、その先にはITインフラを構成するすべての要素をさらに連携できるものが必要だと指摘する。1つのプラットフォームに認証やセキュリティの機能なども含め、必要なすべてが連携できるようにしなければならない。また、今後はさらなる拡張性も求められるともパンディ氏は述べる。

 すべてを連携、統合化した最終段階のハイパーコンバージド・インフラストラクチャが生まれるときには、Nutanix社は刷新され新生会社になる必要があるだろうと、パンディ氏。その際には、エンタープライズクラウドについて考えなければならない。パブリッククラウドとエンタープライズクラウドの真のハブリッド環境を実現していくことになる。

 もちろん、この真のハイブリッドに至るまでには課題もある。たとえば暗号化における鍵の管理は、クラウド業者が行うのか、あるいは顧客自身が行うのか。これを判断するための規制や法律は、国ごとに違うという現状もある。この鍵の管理はどうするべきかは、現状では解決していない。ハイブリッドな環境におけるセキュリティ対策など、今後の課題としては大きなものがあるとも指摘する。

 「Amazon Web Servicesは、これまでは既存のITインフラに対する1つの反乱勢力でしたが、彼等もいずれは既存勢力になります。そうなれば、顧客は1つの勢力による囲い込みを望ません。そのため、パブリッククラウドとエンタープライズクラウドのハイブリッドクラウドになります。その際に、セキュリティを含めハイブリッドクラウドを実現する仕組みを提供していきます」(パンディ氏)

 ハイブリッドな環境になれば、1つのクラウドや場所に依存しないようにする必要がある。そのためにアプリケーションはどうあるべきかも考えなければならない。そのような状況の中で、Nutanixには他社にないポートフォリオを持っていることが強みだという。そしてテクノロジーを通じ、1クリックでサービスを提供するところにも注力している。「クリックし、1分以内のサービス提供を実現します。何ヶ月もかけて実現するようなものではありません」とパンディ氏。そのためにも力を入れているのが自動化の部分でもあると言う。

出所:Nutanix CEO Dheeraj Pandeyプレゼンテーション資料より[クリックすると図が拡大します]

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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