
今、企業と消費者とのコミュニケーションのあり方が難しくなりつつあります。企業→消費者、消費者→企業のどちらも情報量の多さが問題となっています。その背景には、多様化するテクノロジーへの対応の企業と消費者とのタイムラグがあります。スマートフォンもSNSも、企業への普及は消費者への普及から数年は遅れました。企業が遅れる原因は「サイロ状態」という現象にあります。この解決のために何をすべきでしょうか?
企業と消費者のテクノロジーのタイムラグ
企業と消費者との接点――顧客接点は、テクノロジーのタイムラグによるギャップが最も問題になりやすい部分です。スマートフォンやタブレットも、TwitterやFacebookのようなSNSも、Gmailのようなクラウドも、これまでの新しいテクノロジーは企業よりも先に消費者に普及してきました。
従来は電話、FAX、電子メールだけだった企業と消費者のコミュニケーションを見ても、SMS (Short Message Service)、LINEなどのSNS(Social Network Service)、Webチャットといったテクノロジーが登場してきて、顧客接点は多様化してきています。こうしたテクノロジーに先んじる消費者にも、旧来からあるコミュニケーション手段を好む消費者にも、企業は両方に対応していく必要があります。
しかし、企業が新しいテクノロジーに対応するのは一筋縄ではいきません。理由は、新旧のテクノロジーで「サイロ状態」を生じさせない工夫が必要だからです。サイロとは、以下の写真のような穀物や家畜の飼料を蓄える気密性の高い倉庫です。サイロが空気を通さない様子から、ITの文脈でいう「サイロ状態」とは、システム間をデータが流通しなくなってしまう状態を指します。企業が新しいテクノロジーを導入する際には、古いテクノロジーとの間でデータを流通する工夫―「サイロ状態」にさせない工夫が求められます。

写真:サイロ 出所:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wooden_silo.JPG
さて、本稿では「多様化するコミュニケーション手段に企業が対応しないとどのような問題が生じるのか?」「新しいコミュニケーション手段の導入後に”サイロ状態”になってしまうとどのような問題が生じるのか?」「どのようなアーキテクチャで解決すべきなのか?」という切り口で、昨今の企業と消費者のコミュニケーションにおける問題をそれぞれ見ていきます。特にコミュニケーションの方向とコミュニケーションパスの形状に応じて、スルーされるDM問題、隠れLINE問題、見つからない窓口問題の3つに注目します。

▲図 1:本稿で注目する3つの問題[クリックすると図が拡大します]
まずは、「スルーされるDM問題」を見ていきましょう。
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安田 航(ヤスダ ワタル)
NTTテクノクロス株式会社 EAストラテジスト
NTTソフトウェア入社(現社名、NTTテクノクロス)以来、エンジニア、ITコンサルタントとして活動。EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)手法を駆使したIT戦略/グランドデザインの策定と推進に多数の実績を持つ。日本企業の縦割り的な情報システムの考え方に...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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