製品やサービスの市場投入時間を短縮し、協業他社との差別化を図るためには、システム開発期間の短縮が必須です。しかし、多くの企業で課題となっているのがシステム開発の後工程になるほど「手戻り」によるコストが増大すること。この「手戻り」を少なくするため様々な取り組みが実施されていますが、アシストが新たに注目するのが「テストデータ・マネジメント」です。本稿では、開発、テスト段階で利用する高品質で鮮度の高いテストデータにより、不具合検出を前倒して手戻りを減少させるための施策を紹介します。
ビジネスでは「時間」の重要性が加速
ビジネスに不可欠な要素には「ヒト・モノ・カネ」があり、さらに「組織」「文化」「技術」等が加えられることがありますが、昨今、注目されているのが「時間」です。競合他社との差別化のため「製品やサービスを市場へ投入するまでの時間(以下、Time to Marketと表記)を短縮する」ことの重要性が高まっています。また、いち早く新しいサービスを顧客に届けるだけではなく、顧客に自社のサービスを継続的に利用してもらうことが重要で、そのためには新しい価値のあるサービスを提供し続け、顧客と企業の接点を維持しなければなりません。企業の製品やサービスの多くはITで支えられているため、Time to Market 短縮するには、システム開発期間を短縮させなければなりません。
システム開発の理想と現実
JUAS「企業I T 動向調査報告書 2016」の年度別・システム規模別のシステム開発状況によると、500人月以上のシステム開発においては、約50%で工期が遅延し、予算超過は46%、システム品質に対する不満がある割合も30%にのぼります(出典: 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2016」)。このように、システム開発期間の短縮は多くの企業の課題であるようです。それでは、システム開発プロジェクトではどのような課題が存在するのでしょうか。図1は、システム開発プロジェクトのフェーズごとのコストのイメージを表しています。各フェーズ内の欠陥に対する除去コスト(青)よりも、前フェーズ以前の欠陥に対する除去コスト(赤)がシステム開発の後期フェーズに進むほど多くなっています。前フェーズ以前の欠陥に対する除去コスト(赤)とは、いわゆる「手戻り」です。さらに、システム開発プロジェクトの50%以上のコストはテストフェーズであることもわかります。もし手戻りを「ゼロ」にできれば、理屈の上ではシステム開発コストを半分程度に削減できます。

(出典:『日経コンピュータ』(1998年9月28日号)p120(* 日経BP社の許可を得て転載))
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冷水 直也(ヒヤミズ ナオヤ)
株式会社アシスト データベース技術本部 2003年、入社。データベース技術本部技術統括部に所属し、フィールド・エンジニアとしてOralce Databaseの導入、設計、DB統合、研修などを担当。現在はデータベース仮想化ソリューション「Delphix」の技術者として活動中。最近はもっぱら「書道」と...
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