
「MDM」。そう聞いてみなさんは何を連想されるでしょうか? もちろん「マスターデータをマネジメント」するものではありますが、「マネジメント」の対象は多岐に渡ります。人によって、その解釈もマチマチです。そのため、MDMプロジェクトを立ち上げる際には、MDMの対象範囲を正しく理解し、経営層、業務メンバー、ITメンバーで共通認識をもつことが重要です。今回はMDMの4つの側面、効能とそれを実現する機能について解説します。
難問:りんごはいくつ売れたのか?
本題のMDMに入る前に、まずは「マスターデータ」について整理しておきたいと思います。
たとえば、販売分析を考えてみましょう。「誰が、どこで(誰から)、何を、いつ、いくつ、いくらで買ったか?」を集計し、その傾向を把握するのが販売分析の第一歩です。
一般的には、上記における「誰=顧客」、「どこ=店舗/販路」、「何=製品」がマスターデータに相当し、これらのマスターデータと「いつ」、「いくつ」、「いくら」、「買った」が組み合わさったものがトランザクションデータになります。このマスターデータが、事業、地域、販路、アプリケーションごとに異なり、それぞれの方言にもとづいてトランザクションデータが記述されていると、同じ軸でデータの集計ができません。りんごに例えるとこうなります。

図1:りんごの販売実績明細集計
ポイントは、方言ごとに「りんご」、「林檎」、「apple」、「pom」と呼び名が異なるだけでなく、「青りんご」という粒度の違うものが混ざっていたり、「いくつ」の単位も異なっているということです。さらに、アップルジュースやアップルパイなどの加工品まで増えてくるとどうでしょう?「りんごはいくつ売れたのか?」はきっとすぐに答えられない難問になるはずです。
これが実ビジネスの世界でも起きています。「この製品がグローバルのどこでどれだけ、誰にいくらでどう売れているか」を即座に把握することは至難の業になっているのです。いわゆる、横串でデータを見られない状況です。マスターデータがマネジメントされていないと、販売分析だけでなく、企業/グループ全体での集中購買、サプライチェーンにおける在庫の可視化、企業統合に伴う請求一本化やグループ与信管理など、さまざまな企業活動に支障を来たすことになります。
だからといって、世界中の呼び名を「りんご」に強引に統一するのは現実的ではありません。「apple」や「pom」で回っている地域社会=個別アプリケーションがあるからです。そこで、MDMの出番です。各方言はそのまま残しつつ、それらをつないでいくーーーつまり、アプリケーションのレベルで「マスターデータを統一する」のではなく、データのレベルで「マスターデータを統合管理」するのがMDMの役割なのです。
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久國 淳(ヒサクニ アツシ)
インフォマティカ・ジャパン株式会社 セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリスト
2013年4月1日より、インフォマティカ・ジャパン株式会社 セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリストを務める。データプラットフォームに関するソリューション提案活...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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