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週刊DBオンライン 谷川耕一

ワークスタイルを変革して、日本が本気で労働生産性を高めるために必要なこと


 ここ最近、ワークスタイルの変革、テレワーク活用を取材テーマの1つにしている。そんな中、ワークスアプリケーションズ主催「日本・ノルウェーの働き方に関するメディアセミナー」に参加してきた。ここでは、労働生産性第2位のノルウェーと日本における働き方に関する意識調査の結果を報告すると共に、パネルディスカッションでノルウェーと日本でどのような働き方の違いがあるか、さらには日本で先進的な取り組みをしているリクルートなどでどのような取り組みをしているかが話題となった。

自由な裁量で働き、生産性を上げるノルウェー

 ちなみに日本の労働生産性は、主要先進7カ国中で19年連続で最下位というていたらく。一方のノルウェーは労働生産性は2位と高い。今回の調査では日本の316名、ノルウェーの120名に対しインターネット調査を行っている。

 調査の結果、ノルウェーの労働者のうち93%が自社の生産性が高いと回答している。対して日本は23%しか自社の生産性は高いと思っていない。ノルウェーと日本では、労働時間の長さはあまり変わらない。むしろノルウェーでは休日に働くのは日本より多いくらいだ。つまり、この労働生産性の高さに対する意識の差は、労働時間に比例している話ではない。

 差が大きく出たのが「手順が決まっている業務」の割合だった。日本はノルウェーの3倍も手順が決まっている業務が多いと回答している。もう1つ制度面の違いとしては、ノルウェーはフルフレックスまたはフレックス制度を導入している割合が82.5%と極めて高い。

 一方の日本は、これが34.5%しかない。さらにリモートワークを認めているかどうかもノルウェーでは77.5%で、日本は認められていないのが79.1%と反転している。こうした結果を見ると、ノルウェーが時間も場所もとらわれない自由な働き方を実現できている様子がよく分かる。

人を管理する人をたくさん雇うと、コストが上がり生産性が落ちる

 パネルディスカッションに登壇した、在日ノルウェー商工会議所 専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏は、リモートワークはノルウェーではごく一般的だと言う。多くの場合、コアタイムだけが設定され「時間内に速く仕事終わらせることのプライオリティが高くなっています。長く働く日本とは逆でしょう。ノルウェーでは仕事をすることが第一ではなく、早めに出勤し速く仕事を終わらせ家族と一緒に過ごす時間を長くすることが一番です」とベルグ氏。

在日ノルウェー商工会議所 専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏
在日ノルウェー商工会議所 専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏

 ノルウェーは仕事のやり方に対するフレキシビリティが高く、ライフスタイルに応じて仕事の場所、時間を選べるようになっている。とはいえフレックスで仕事をしている人は日々忙しく過ごしている。仕事の合間に家事も子育てもする。家事が終わった後の夜遅くにメールをチェックする。必要であれば休日にも翌週のための資料作りといった仕事もする。きっちりとスケジューリングできないことが起こりやすい状況にあるからこそ、フレックス制度を最大限に活用する働き方をするとベルグ氏は説明する。

 もう1つノルウェーで興味深かったのが、組織のあり方だ。ノルウェーはかなり人件費が高い国だ。「人を管理するための人を雇うと、コストが上がることになります」とベルグ氏。管理職がたくさんいればそれだけコストが上がり、結果的に労働生産性を落とすことになると言うのだ。

 この発想は、おそらく日本にはないものだろう。結果的にノルウェーの組織は、かなりフラットなものとなっている。ヒエラルキーで管理するのではなく、プロジェクトベースで必要に応じチームを作って仕事を行うケースが多い。そういう仕事のやり方では、誰かから指示された作業を行うのではなく、自分で考え判断し自分の裁量で進める仕事が自ずと多くなるわけだ。

 さらにノルウェーでは、リモートワークも当たり前だ。リモートワークを採用することは、仕事にかかる時間を短縮することでもある。通勤時間がもったいなく、その時間を仕事に充てられれば速く仕事が終わるという考え方なのだ。休日に仕事をすることが多いけれど、その場合も出社するわけではなく自宅で作業するのが普通だ。

 また、ノルウェーでは紙の印刷物がかなり少ないという。環境への影響を考慮し「このメールは印刷しないでください」との表記がメールに加えられていることもあるそうだ。紙の印刷がなければ、プリンターなど固定した設備も必要がなくなる。こういう感覚を持っているのがノルウェーなのだ。なるべく自分の近くにプリンターやコピー機が欲しいという日本とは、そもそもの発想が違う。

 一方で、ノルウェーもミーティングは多い。多いのは社内ミーティングで、リモートワークが当たり前とはいえ、社員同士のコミュニケーションがないわけではない。逆に社外とのミーティングは少なく、顧客などとのコミュニケーションはメールや電話で済ませることが多い。このあたりは、ノルウェーのやり方が必ずしも良いわけではないとベルグ氏は指摘する。

 「日本の良いところはサービスの質の高いところです。ノルウェーには生産性の高さはあっても、丁寧な接客はあまりないかもしれません。日本のやり方の良いところはあり、学ぶところがあります」(ベルグ氏)

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苦労して出勤しているのに、オフィスで集中して仕事ができない

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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