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第1回 総務省「クラウド特区」は成功するのか? 大規模データセンター誘致を巡る障壁

  2010/04/30 07:00

4月初旬に総務省がクラウド特区を計画していると報じられた。青森か北海道に10万台規模の大規模データセンターを誘致し、規制緩和や税制優遇を検討しているという。

日本がデータセンター誘致に出遅れた理由

 4月初旬に総務省がクラウド特区を計画していると報じられた。青森か北海道に10万台規模の大規模データセンターを誘致し、規制緩和や税制優遇を検討しているという。 特区をつくるまでもなくデータセンター事業は日本でも順調に伸びている。いま何のために規制緩和や税制優遇を通じたクラウド誘致が検討されるのだろうか。  

 背景としては、国際的に進みつつあるデータセンターの大型化や、国境を越えたデータセンター間連携の進展がある。ここ数年、Webサービス事業者によるデータセンター建造ラッシュが続いている。ネット起業の集積する米国だけでなく、欧州やアジアでも数万台単位のサーバーを収容する大規模データセンターの建造が相次ぐ。  

 日本は世界第2位の市場であるにも関わらず、海外からのデータセンター誘致では欧州やアジアのシンガポール・中国と比べて出遅れている。日本が市場規模の割にデータセンター誘致に出遅れた理由は数多い。まず、EU域内でデータ保護について制度が整合している欧州と比べて、アジアは国ごとに制度が異なり域内で国境を超えてデータセンターを分散協調させることが難しい。  

 幸いなことに日本は米国と海底ケーブルで直結されており、他のアジア諸国と比べたら米国からのサービス提供で品質を担保しやすい。また、日本は様々な税制や規制のために高コスト構造となりがちである。検索エンジンのように公開された情報のみ扱うサービスであれば、サーバーが国内になくても大きな問題はない。

 しかしメールや企業システム、個人情報を扱うシステムでは国によって異なるデータ保護法制が問題となる。例えば日本では通信の秘密が強く保護されているが、米国では犯罪対策のための通信傍受が幅広く認められている。 

 また、犯罪捜査のために証拠を押収する場合も、日本では最近になってサーバーではなくデータとしての押収が認められるようになったが、国によってサーバーが押収される場合もある。捜査対象となった場合だけでなく、同じサーバーを共有するユーザーが捜査を受けることで、サービスが中断するリスクも考えられる。   

 国によって法制が異なり、情報漏洩やサービス遮断のリスクも異なるが、サービス事業者がサーバーの立地や国籍を公開しているケースは限られる上、仮に公開されている場合であっても、それぞれの国の法律を踏まえてリスクを評価することは現実的ではない。

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著者プロフィール

  • 楠正憲(くすのき まさのり)

    マイクロソフト 法務・政策企画統括本部 技術標準部 部長 1977年、熊本県生まれ。ECサイト構築や携帯ネットベンチャー等を経て、2002年マイクロソフト入社。Windows Server製品部Product Manager、政策企画本部技術戦略部長、技術統括室CTO補佐などを経て2009年より現職

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