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経営方針と関連させて書く提案依頼の主旨・目的

  2016/02/03 06:00

 前回は基本情報について書きました。今回は、まさにRFPの本丸である「提案依頼の主旨・目的」について取り上げます。

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経営方針と関連させて書く提案依頼の主旨・目的

 さて、次に書くのは、まさにRFPの本丸である、「提案依頼の主旨・目的」です。

 「自分の会社の経営には、こんな課題があり、それを改善する為に、業務をこう変えたい。それを支援するシステムを提案してほしい」と依頼する部分です。システムを考える時に注意すべきは、もう古典と言ってもいいくらいに言い古されていることですが、「システムは、あくまで、経営課題の解決のためにある。」 ということです。

 たとえば、セールス支援システムの提案依頼を出す際、ベンダから、「WEBマーケティングによる顧客情報収集とそれに基づくセールス活動が効果的らしいので、ぜひ、うちの会社でも…」と考えるのは、いかにも短絡的ですし、仕組みに振り回されています。WEBマーケティングが本当に自社の経営に寄与するものなのか、寄与するとしても、同じお金と時間を使って、もっと効果的な戦略があるかもしれません。

 RFPを書く時にも、後の提案や要件定義で本来のシステム化の目的を外さないためにも、このあたりを明確に書いておくべきです。一つずつ見ていきましょう。

システムやサービス導入の背景 (経営方針及びシステム化方針 等)

 そもそも、なぜ、システム化を検討することになったのか、それを経営者の視点で書きます。一般企業の場合、経営者の視点とは、古くは「売上」「コスト」、最近はこれに、企業コンプライアンスやセキュリティなど企業の継続と発展に関することに着目した視点ということになるでしょうか。

 たとえば皆さんが、銀行のシステム担当者であったとします。ある日、上司に呼ばれて「来年までに、すべての視点に外貨を取り扱えるATMを設置することになったので、ベンダにRFPを提示して提案を募って欲しい」と言われたとします。この時に、システムや導入の背景として書くのは「当行では、外貨を扱えるATMを設置する方針となった」 ということではありません。そんなことを書いても、このATMシステムを導入したときの銀行のメリットがわかりません。RFPの書き手であるあなたは、なぜ外貨を扱えるATMを導入するのか、それをやって銀行は何が嬉しいのかを逆に上司に尋ね、RFPにも記述すべきです。

 なぜ、そんなことが必要なのでしょうか。ベンダは銀行のメリットがわからないと、ATMシステムを開発できないのでしょうか。たとえば、この場合、そもそもの背景によって扱うべき通貨が変わってきます。昨今の外国人観光客の増加が背景ならば、旅行者が日本に持ち込んでくる割合の高い通貨としてドル、ユーロ、ポンドに加え、中国の人民元や韓国のウォンを扱えるようにする必要があります。また、東京オリンピックの開催にあたり、世界中の人が集まることが背景としてあるのなら、世界中の人に不便な思いをさせないようにと、できる限り多くの通貨に対応する必要があるかもしれませんが、ATMを設置する視点はごく限られた首都圏の一部で済むことになります。同じ「他言語対応ATM」でも、通貨(=機能)や支店(=システム化範囲) が異なるわけです。ベンダは提案時に、費用や金額の見積もりも出すわけですから、この辺りを検討してもらうための情報として経営方針やそれに基づくシステム化の背景が必要になってくるのです。

 実際にこんなことがあるかはわかりませんが、背景と経営方針からシステム化の目的を導き出している例を挙げると、以下のような感じになるでしょうか。

 これらをまとめて示すことで、提案者であるベンダは新ATMに持たせる機能はアジア通貨であり、システム化の範囲が観光地近辺の支店であることが分かります。これらを示さずに、後述の主要要件のところに「対応通貨は、人民元とウォン」「支店は、東京都内、京都市内、大阪市内…」と書いてもよいのですが、こうしたことをベンダに知っておいてもらうことは、提案時にもその後の開発時にも色々と役に立ちます。これは、前述した「基本項目」で「ユーザのいる市場と競合状況」「ユーザを取り巻く環境とその変化」を記すのと同じ意味合いを持ちます。

 まず、提案時にはベンダの方から「昨今は、タイやインドネシアからの観光客も増えているから、そちらの通貨も対応してはどうか、当社は、既に同様の実績があり、流用可能です」といった新たな提案を得られる可能性があります。実際に、システム化の目的を達成するのに、有効な提案である場合もありますし、そうでなくともそうした提案を積極的に行ってくれるベンダは今後も何かと頼りになるベンダと考えることができます。システム開発のベンダとはその後も長い付き合いとなり、様々な困難を共に乗り越えていく相手ですから、自ら問題を見つけ、解決策を提案する姿勢と知識を持っているベンダを選ぶことはとても重要です。

 また、実際に開発プロジェクトになると、要件定義や設計の上流段階で、当初の目的とは外れた要望が色々なところから出てくる可能性があります。「仙台や広島には大きな支店もあるんだから、そちらも外貨対応すべきでは?」「基軸通貨の一つであるポンドに対応しないなんてありえない」といった声が、エンドユーザや経営幹部から噴出することは、実際にもよくあります。こうした声にベンダとユーザのシステム導入担当者がしっかりとタッグを組んで対応するためにも、システム化の動機である背景と経営方針、そしてシステム化の目的をしっかりと共有しておくことが大切です。

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著者プロフィール

  • 細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

    ITプロセスコンサルタント 東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員 1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より2012年まで日本アイ・ビー・エム株式会社にてシステム開発・運用の品質向上を中心にITベンダ及びITユーザ企業に対するプロセス改善コンサルティング業務を行なう。現在は、東京地方裁判所でIT開発に係わる法的紛争の解決を支援する傍ら、それらに関する著述も行なっている。 おもな著書に、『なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術』 日本実業出版社、『IT専門調停委員」が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則』。

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