2016年の国内働き方改革市場規模は1兆8,210億円に達した
IDCではハードウェア、ソフトウェア、ITサービス/ビジネスサービス、通信サービスに分類されるICTの市場規模を予測している。これら4分野の中から、働き方改革の主目的である長時間労働の短縮、労働生産性の向上、柔軟な働き方といった取り組みをサポートするICT市場の規模を積み上げ、働き方改革ICT市場として算出した結果、その規模は2016年に1兆8,210億円に達した。
2016年時点では、働き方改革に不可欠なモビリティインフラストラクチャであるノートブックPC、タブレット、スマートフォンといったハードウェアが同市場の5割弱を占めている。官民を挙げた働き方改革の大きなきっかけとなった長時間労働の削減に関する取り組みは、2016年から2017年にかけて積極的に実施されたが、その多くはICTが関わらないものだった。たとえば、上長が部下の残業を細かくチェックして安易に残業をさせない、夜の一定時間になるとオフィスを消灯する、ノー残業デーを徹底するというような取り組みになる。
一方で、ICTを活用して生産性を向上させる取り組みとしては、稟議や休暇/残業の申請承認システム、経費精算システム、Web会議、ファイルやデータのシェアリングなど単体のアプリケーションの導入に留まることが多く、結果として、市場規模としては相対的に小さなものとなった。
2021年に向けて業務ツール導入やシステムインテグレーション需要が拡大
2018年以降は、労働生産性の向上や柔軟な働き方を実現する取り組みが洗練され、テレワークの環境整備に向けた業務ツールのクラウド化やモバイル機器利用の拡張に伴うセキュリティ対策の強化、モビリティ機器管理ツールの導入などが進むとIDCではみている。
生産性の向上を本格的に追求する企業はさらに進んで、業務の棚卸を実施し、棚卸に基づいて業務効率化ツールを導入し、既存システムとのインテグレーション需要も拡大すると予測される。それらのツールの中にはAIが搭載されたものもすでに出現しており、業務効率化への需要を一層刺激すると考えられる。
これらの状況を踏まえて、働き方改革ソフトウェア市場とITサービス/ビジネスサービス市場は、働き方改革に限定しない全体市場の成長速度に比べて、はるかに高い成長を見せ、働き方改革ICT市場全体では、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は7.9%、2021年の市場規模は2兆6,622億円に達するとIDCは予測している。
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川和子氏は「生産性ツールをとってみてもユーザー企業の多くはその導入効果を把握しきれていない上に、自社にどれが適しているも分かっていない。ITサプライヤーがまずITツールを使いこなして自社の非効率を克服した体験を持つことで、自社のツールの販売に説得力が増し、ひいてはマネタイズの近道にもなる」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内働き方改革ICT市場予測、2017年~2021年:ハードウェア、ソフトウェア、ITサービス/ビジネスサービス、通信サービス別」にその詳細が報告されている。レポートでは、働き方改革ICT市場を構成するハードウェア、ソフトウェア、ITサービス/ビジネスサービス、通信サービスの市場ごとの市場規模予測と、ハードウェアとソフトウェアについてはさらに細分した市場規模予測を提供している。