3Dプリンターハードウェアおよび三次元造形材料の支出額が全体の約3分の2を占める
世界の3Dプリンティング関連支出のうち、3Dプリンターハードウェアおよび三次元造形材料の支出額が全体の約3分の2を占めており、この割合は今回の5年間の予測期間中に大きな変化はない。そして2021年には、両者の支出額はそれぞれ69億ドルおよび67億ドルに達する見通しだ。
3Dプリンティングサービス関連支出(主にオンデマンドパーツサービスおよびシステムインテグレーションサービスが含まれる)は、これらよりも少し少なく、2021年には55億ドルとなるとみている。3Dプリンティングソフトウェア関連の支出は市場全体よりも成長が遅く、5年間のCAGRを18.6%と予測している。
IDCでは、産業分野別でも支出額を予測している。支出額が最も多い産業分野は、組立製造業になる。予測期間全体を通じて、全世界の支出額の半分以上がこの分野に関連するもの。次は医療サービス分野で、2018年の支出額は約13億ドルとなるとみている。3番目が教育分野(同9億7,400万ドル)、そして一般消費者セグメント(同8億3,100万ドル)が続く。
IDCの予測では、2021年には専門サービス分野および小売分野が、一般消費者セグメントを抜くとみている。産業分野別の成長率の比較では、5年間で最も急成長するのは、資源分野(38.4%のCAGR)および医療サービス分野(35.4%のCAGR)になる。
ユースケースでは、今後、医療関連、歯科関連が成長する
さらに、ユースケース(各産業分野における具体的な使われ方)の視点で見ると、3Dプリンティングの主なユースケースは、プロトタイピング、補修パーツ製造、新製品用パーツ製造であることがわかった。製造業におけるこれら3つのユースケースだけで、2018年の全世界の支出額の44%を占める。
その後、2021年には、医療サービス分野の成長によって歯科関連製品と医療サポート関連製品の製造がユースケースの4位と5位に入る見込みだ。中でも、最も急成長が見込まれるのが組織/臓器/骨(56.6%のCAGR)および歯科関連製品(36.9%のCAGR)の製造になる。
米IDC Insightsのリサーチマネージャーであるマリアン・ディーアクィラ氏は「3Dプリンティングソリューションは、プロトタイプ作製だけにとどまらず、さまざまな分野に広く普及し始めている。今後5年間の3Dプリンティングの普及によって、新製品用パーツ製造、補修パーツ製造、歯科関連製品製造、医療サポート関連製品製造といったユースケースが、引き続き急速な成長を示すだろう。特に医療分野において高品質製品を低価格で製造できる恩恵が大きく、全産業に占める医療サービス分野の支出額割合が、2021年には現在の2倍程度になる可能性がある」と述べている。
2018年、合計支出額が最も多い地域は米国(41億ドル)、その次が西欧(35億ドル)になる見通しだ。これら2つの地域の支出額は、世界全体の支出額の約3分の2に相当する。第3位は中国で、支出額は15億ドル以上。以下、中東欧(CEE)、中東およびアフリカ(MEA)、日本/中国以外のアジア太平洋地域の順となる。今後5年間で、世界9つの地域のうち6つがCAGR20%以上の成長を示す見込みだ。中でも特に急速な成長が見込まれる地域は、中南米(CAGR 27.2%)およびCEE(同26.0%)の2つになる。
米IDC ハードコピーソリューションズ リサーチディレクターのティム・グリーン氏は「3Dプリンティング技術の進歩によって、あらゆる産業分野で3Dプリンティングシステムが利用され始めている。特に、自動車産業、航空機産業、医療分野などでは、毎日のように驚くべきイノベーションが起こっている。しかしながらこうしたイノベーションも、3Dプリンティングが持っているデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する潜在力という点では、まだほんの始まりに過ぎない」と述べている。
Worldwide Semiannual 3D Printing Spending Guideでは、3Dプリンティングに関する事業機会を数値化している。3Dプリンティングとは、デジタルモデルまたはファイルを元に、造形材料を連続的に積層することで物体や形を造形出力する技術になる。このSpending Guideには、世界9つの地域における19の産業分野について、15のユースケースに基づく支出額データが掲載されている。
また、3Dプリンティング用ハードウェア、造形材料、ソフトウェア、サービスに関する支出額も掲載されている。一般的な市場調査データとは異なり、このSpending Guideは、各産業分野における3Dプリンティング関連の支出に関して、今後5年間の方向性を意思決定者が総合的に把握するためのガイドとして設計されている。