国内のユーザー企業の半数以上がベンダーによる監査への対応経験あり
ライセンス監査は、ソフトウェア・ベンダーがユーザー企業に対して実施する、ライセンス違反の有無を確認するための取り組みになる。今回の調査では、国内のユーザー企業の50%以上がベンダーによる監査への対応経験を持ち、今後、対応することを想定する企業と合わせると70%弱の企業が、近い将来に監査を経験することになる見込みだという(図1)。
――ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門リサーチ ディレクターの海老名剛氏は、今回の結果について次のように述べている。
国内企業の多くがERPをはじめとするパッケージ・ソフトウェアを利用していますが、大掛かりなライセンス監査に向けた準備が強く意識されたことは少なかったとみています。
一方で、パッケージ・ソフトウェアがカバーする業務範囲は拡大し続けています。最初の導入以降に、利用範囲が大幅に広がる場合もあります。IT部門が、さまざまな部門の利用状況を正しく把握する難易度は以前より確実に高まっています。
特にグローバルでビジネスを展開するメガベンダーでは、他のベンダーの買収統合により、現在も、機能や対象ユーザーが拡大しています。こうしたベンダーでは、定期的にユーザー企業から利用状況に関する申告を受けるのみでなく、率先して確認に乗り出す姿勢が強まっています。
グローバル・ベンダーの監査チームは本国にある場合が多く、北米や欧州などの地域での監査が先行してきましたが、日本企業に対する監査も同様に、一般化しつつあるとみています。現時点でガートナーに寄せられる問い合わせは、グローバル・ベンダーの監査に関するものが多いですが、同じトレンドが日系を含む他ベンダーにおいても、強まる可能性があります。国内のITリーダーは、こうしたトレンドを十分に意識する必要があります。
監査を受けた企業の60%強が追加の支払いを求められていた
今回の調査ではさらに、ライセンス監査を受けた企業に対して、監査後のベンダーからの要求についても尋ねている。その結果、監査を受けた企業の60%強が追加の支払いを求められていたことが明らかになった。
本来必要なライセンス数を購入できておらず、追加ライセンスが必要になった、または、現在のライセンスの権限では実行できない処理を実行しており、より権限レベルの高いライセンスが必要であることが明らかになった、といった回答が見られた(図2)。
――海老名氏は次のように述べている。
ソフトウェアの利用は複雑化しています。単一ベンダーが提供するソフトウェアのみを使うのではなく、他のベンダーのソフトウェアとインテグレーションする、また、アドオン画面経由でアクセスする、ということも一般的です。
最近では、IoT(モノのインターネット)やロボティック・プ ロセス・オートメーション(RPA)といった技術の進展もあり、今後の新規契約や契約更新では、ソフトウェアへのアクセス形態がさらに多様化することが予想されます。
こうした中、どういった操作に対し、どのようなライセンスが必要か、ユーザー企業にも混乱が見られます。ソフトウェアの契約時や、日々の運用の中で、自社が所有するライセンスと利用シナリオについて、ソフトウェア・ベンダーとの間にギャップがないよう、詰めておくことが必要です。
こうした交渉やコミュニケーションに、国内のユーザー企業は、さらに精通しなければなりません。例えば、契約書において問題になりがちな文言を把握しておくこと、自社が強い交渉力を持つ方法や機会を把握することが大切です。
なお、ガートナーは8月31日、「ガートナー ITソーシング、プロキュアメント&アセット・マネジメント サミット 2018」を開催する。サミットでは、国内外のアナリストならびにコンサルタントが、デジタル時代のIT人材を中心テーマに据えつつ、IT戦略・投資・組織・ソーシングなどのトピックにおける最新のトレンドや最先端の知見、洞察を提供するという。サミットでは、海老名氏をはじめとしたアナリストが、SAP、Oracle、Microsoftの各ユーザー企業を対象に、ソフトウェア契約交渉について議論するセッションも実施される。