1. 市場概況――クラウド基盤サービス利用は中堅・中小企業においてももはや一般的に
2018年の国内クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場(事業者売上高ベース)は、2017年同様に既存システムのクラウドへの移行が市場を牽引する形で堅調に推移し、前年比133.3%の3,200億円と推計する。
クラウド基盤サービスの利用は、年商数百億円以下の中堅・中小企業においてももはや一般的となり、ユーザー企業がパブリッククラウドやプライベートクラウド、オンプレミスなどのシステム環境を組み合わせて使い分けるハイブリッドクラウドの利用も増加基調にある。
2. 注目トピック――DXの基盤としての活用は、2018年はPoCが中心
IoTやAIなどデジタルを活用して企業やビジネスに新しい価値を持たせるデジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤としての、クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス活用は、期待されたほど大きな効果を生まず、2018年は総じてPoC(Proof of Concept/概念実証)が中心であった。
しかし、2018年下期以降、DXに関する取組みがビジネスに実装される芽が出始めた。DXはPaaSの拡充とともに、2019年には本市場を成長させる大きな要因の1つになると考える。そうしたことなどから、2019年の国内クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場(事業者売上高ベース)は、前年比131.3%の4,200億円に達する見通しである。
3. 将来展望――2022年までの年平均成長率は29.3%で、2022年には8,400億円に
今後は、ユーザー企業の基幹系システムのクラウド移行による従量(使用量)拡大なども期待される。この点に関する一例として、SAPのERP保守サポートが2025年に終了予定という問題が挙げられる。
同ERP製品は2,000社以上の企業が導入しているとみられ、中には「SAP S/4 HANA」をAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure上に構築することについて検討しているユーザー企業もいる。最近は、基幹系システムのクラウド移行事例も増加しており、今後の市場拡大要因の1つになると考える。
基幹システムは未だオンプレミスの割合が高く、クラウド移行に伴う商談規模も大きい。そのため、クラウドベンダ(サービス提供事業者)にとって、市場開拓のポテンシャルが非常に高いといえる。
そうしたことなどから、国内クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場(事業者売上高ベース)は、2016年から2022年までのCAGR(年平均成長率)が29.3%で成長し、2022年には8,400億円になると予測する。クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場は、今後も高い成長を継続していくと考える。
なお、この発表について詳細は、矢野経済研究所が刊行した「2019 クラウドコンピューティング(IaaS/PaaS)市場の実態と展望」に掲載されている。