この調査は、オーストラリア、フランス、ドイツ、シンガポール、英国、および米国の市民6,000人以上を対象として実施され、全体の45%が1年前と比べてAIを活用したサービスをより好意的に受けとめていると答え、43%はあまり変わらないと回答した。1年前と比較してAIを活用したサービスの受容度が下がっていると答えた市民は12%だった。
さらに今回の調査では、行政機関がAIを活用することを、市民が肯定的に捉えていることが明らかになった。回答者全体の62%が、行政機関は民間企業と同等またはそれ以上に、AIを活用したサービスを提供する資格があると回答している。
また半数以上(56%)が、新たな行政サービスまたは既存サービスの向上に向けて行政機関がAIを活用することを支持すると回答。一方で、行政機関によるAIの倫理的かつ責任ある利用について懸念を表明したのは、わずか25%だった。
また、行政職員の回答者は一般市民と比べ、行政機関によるAI活用を肯定的に捉えている。行政職員の67%が行政機関によるAI利用を支持していると回答した一方、それ以外の回答者では、52%だった。同様に行政機関の回答者は、1年前よりもAI活用を好意的に受けとめていると回答する割合(63%)が、それ以外の回答者 (41%)よりも高くなった。
アクセンチュアの公共サービス・医療健康本部 マネジング・ディレクターの水田響氏は次のように述べている。
「民間企業が提供するデジタルを活用したきめ細やかなサービスの浸透により、行政サービスに対する市民のニーズや期待も急速に高まっています。一方で、超少子高齢化社会において税収や職員などの減少が避けられない状況においても、あらゆる市民に利便性の高いサービスを提供する必要性があるなど、日本においては行政サービスの抜本的な効率化・高度化が喫緊の課題です」。
「課題解消に向けてはAIをはじめとする先進デジタル技術のさらなる活用は不可欠です。本調査で導き出された通り、市民のAIを活用したサービスの受容度は高まっています。AIは、人間との協業によるサービス向上の機会を創出してくれるため、行政機関もAIの倫理的かつ責任ある活用に配慮しながらも、能動的にAIを活用したサービス提供を追求する必要があります」。
これまで多くの独立系調査会社のアナリストが、行政機関におけるAI活用の可能性拡大や課題について言及している。IDC Government Insightsでリサーチディレクターを務めるアデレード・オブライエン(Adelaide O’Brien)氏は次のように述べている。
「IDC Government Insightsでは、間接部門や市民向けのセルフサービスでAIが広く採用される中、2020年までには、複雑化した特殊なタスクややり取りに対応するために職務の見直しが必要になると予測しています」。
前述の水田氏は、さらに次のように述べている。
「AIをはじめとするデジタルの進化により、市民のニーズに合わせてパーソナライズされたサービスや、より便利で、より簡単で、より分かりやすい、優れたサービスの構築が可能になります。これらは、多くの行政機関が目指している姿です。今回の調査では、行政職員も一般市民も、行政機関によるAIを活用したサービスを支持していることが明らかになりました。この事実は行政サービス変革をさらに推進する追い風となるでしょう。単に既存のやり取りを自動化するのではなく、AIを活用することで市民中心プラットフォームによる行政サービスが実現可能となります」。