ガートナーが、日本国内のユーザー企業にデータ利活用の状況を尋ねたところ、「全社的に利活用している」と答えた企業は20%だった。「一部の事業・組織で利活用している」と答えた企業の割合は36%であり、過半数の企業が、多かれ少なかれ、データを利活用していることが明らかになった(図1)。
その一方で、現時点で活用可能なデータからビジネスに十分な成果を得られているかを尋ねたところ、「十分に得ている」という回答はわずか3%だった。「ある程度得ている」という34%を加えても合計で37%という結果から、日本では、半数以上の企業がデータを利活用しているものの、利用可能なデータから何らかのビジネス成果を得ている企業は、全体の3分の1にすぎない現状が浮き彫りになった(図2)。
これを、図1でデータを「全社的に利活用している」とした20%の企業に限定して見ると、ビジネス上の成果を「十分に得ている」という割合は12%になり、回答者全体での割合と比べると4倍になった。
ところが、「一部の事業・組織で利活用している」とした36%の企業に限定して見ると、その割合は1%と一気に減少し、それ以外の企業では0%となった。この傾向は、ビジネス上の成果を「ある程度得ている」という割合でも同様だった。
ビジネス上の成果を「あまり得ていない」「まったく得ていない」という割合は、(全社的にか、一部の事業・組織のみでかを問わず)データを利活用している企業としていない企業では逆転するため、データ利活用の状況とビジネス上の成果には相関関係があると言える(図3)。
今回の調査では、成果を得ているか得ていないかといった回答が、定量的な指標に基づいたものであるか(感覚的なものではないか)を検証するために、ビジネス成果を判断する定量的な指標の有無も尋ねた。
その結果、データを利活用している企業やビジネス上の成果を得ている企業ほど、定量的な指標を定めていることが明らかになった。
今回の調査結果について、ガートナーのアナリストでシニアプリンシパルの一志達也氏は、次のように述べている。
「データの利活用からビジネス上の成果は得られているのか - それを確かめるためにも、現状を把握したり改善を実感したりするにも、指標が必要です。定量的な指標を定め、データの利活用を全社的に根付かせるのは、決して容易なことではありません。データを扱うスキルを備え、一定以上の経験を有する人材が組織全体にいなければ、データを利活用する文化は醸成されにくく、十分な成果を得ることもできないでしょう。それだけに、人材の確保は重要ですが、多くの企業では育成や採用の取り組みが進んでいません。人事部門の協力を仰ぎながら、長期的、短期的に人材を確保する方法を計画し、文化醸成と人材育成の両面から取り組んでいくことが重要です」。
なお、ガートナーは6月10日~12日に、東京コンファレンスセンター・品川において「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2019」を開催する。サミットでは、「不確実な時代だからこそ、明確な目標を掲げてリードせよ」をテーマに、データとアナリティクスの活用レベルを引き上げ、不確実な環境の中でも目的を見失うことなく、デジタル経済における競争に勝利するための戦略や方式を提示するという。