サービス開始当初のインフラ整備は限定的、2019年~2023年の年間平均成長率は73.7%と予測
2019年9月の5Gプレサービス開始を前に、5Gに対する関心と期待が高まっているが、IDCでは現在の市場の高揚感に対して、5Gサービスの展開速度は緩やかになると予測している。そのため、5Gサービス向けインフラストラクチャ整備も、サービス開始当初は限定的なエリアに留まり、5G SA(Standalone)に向けて動き出す2021年以降が本命であると考えている。
2021年の国内5Gネットワークインフラストラクチャ市場の前年比成長率は、229.8%と2020年の3倍以上に一気に拡大するとみている。また、2019年を起点にした2023年までの4年間の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は、73.7%と予測している。
5Gネットワークインフラストラクチャの中心は、やはり基地局/RAN(Radio Access Network)になる。市場規模は、2023年で2,623億2,000万円とみており、本調査レポートで取り上げた5Gネットワークインフラストラクチャ市場の66%を占める。
一方で、少なくとも2023年時点では、5G RANの市場規模は4G/LTEのピーク時には届かないとみている。C-RAN(Centralized-RAN)やCloud-RANと呼ばれる、RU(Radio Unit)をBBU(Base Band Unit)に高密度に収容するRANアーキテクチャが5Gでは中心になり、設備投資の効率化が進むことが理由の1つだ。
5G SAインフラ構築はエッジ拠点の仮想化ネットワーク基盤といった新たな需要を生み出す
5Gサービス向けインフラストラクチャ整備は、通信事業者向けルーターおよびイーサネットスイッチ市場にも好影響を与える。
5G RANの拡大は、フロントホールおよびモバイルバックホールの拡張とそれに伴うイーサネットスイッチやルーターの需要を導き出し、5G SAインフラストラクチャ構築は、コア拠点のネットワーク基盤構築に留まらず、MEC(Multi-access Edge Computing)のようなエッジ拠点の仮想化ネットワーク基盤といった新たな需要を生み出す。
こうした5Gサービス向け需要の高まりを追い風に、固定通信サービス向けを含めた国内通信事業者向けルーターおよびイーサネットスイッチ市場は、それぞれ7.0%、16.7%の2018年~2023年のCAGRを予測している。
低迷が続いていた国内通信事業者向けネットワーク機器市場とって、5Gネットワークインフラストラクチャ整備はまたとない回復の機会になる。
これまでの努力の末にサプライヤーに選定された5Gインフラストラクチャ供給ベンダーに対して、「サプライヤー選定後こそが重要である。導入する機器の実際の性能や導入時の省力化への貢献などで、最終的な導入量は大きく変わってくる。導入開始後の製品の改善や、通信事業者へのサポートに選定サプライヤーは可能な限りのリソースを費やし、他のサプライヤーに対して優位な立場構築に尽力すべきである。サプライヤー選定後も気は抜けない」と、IDC Japan コミュニケーションズのグループマネージャーである草野賢一氏は述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「国内 5Gネットワークインフラストラクチャ市場予測、2019年~2023年:通信事業者向けルーター、イーサネットスイッチを含む」にその詳細が報告されている。