矢野経済研究所は、11月9日、2020年度の国内民間企業のIT投資実態と今後の動向についての調査結果を公表した。
1.市場概況
国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2019年度が前年度比3.2%増の12兆8,900億円と推計した。2019年度は、既存システムの刷新/更新やWindows7のサポート終了によるWindows10への買い替え、消費増税前の駆け込み及び税率変更対応、元号改正対応などへの需要が高まったことで、堅調に推移したという。
DX(デジタルトランスフォーメーション)投資については、大企業を中心に活発化してきているものの、中堅・中小企業の動向には大きな変化が生じていないのが現状だとしている。
2.注目トピック
法人を対象としたアンケート調査においては、新型コロナウイルスの影響を受けたIT投資の方向性の変化について尋ね、国内の民間企業等512件の回答を得た。アンケート調査の結果は、「働き方改革」に向けたIT投資の方向性について、「大きく増加」「やや増加」と回答した比率が合計60.2%で、他の設問項目と比較して最も高い割合となった。
2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてテレワークが急速に進み、ノートPCやWeb会議システムなどに対する需要が急拡大した。コロナ禍により、働く場所や働き方が多様化する中で、今後も働き方改革に向けたIT投資が進むとしている。
3.将来展望
2020年度以降における国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2020年度が前年度比0.1%増の12兆9,000億円、2021年度は同4.3%減の12兆3,500億円、2022年度は同0.4%増の12兆4,000億円の予測だとしている。
2020年度では、新型コロナウイルスの影響を受け、IT投資計画の先送り/見送りなどマイナスの要因が生じている。一方、テレワーク環境の整備に向けた設備投資が好調であることや、大企業を中心に大規模システムの刷新/公開が概ね予定通りに実行されるなどプラスの要因もある。そのため、2020年度の市場規模は前年度比横ばい程度になるという。
2021年度はコロナ禍による業績不振の影響を受ける形で、不要不急のシステム/サービスの先送り/見送りなど、企業のIT投資が縮小傾向になると見込まれることから、市場規模は前年度比4.3%減になると予測された。
2022年度以降は世界経済が立ち直り始めることなどを背景に、5Gの本格普及が進むことや、働き方改革の推進、データを活用した取り組みの進展によるAI/IoTなどの普及。さらに、これらを受けてセキュリティ対策の必要性が高まることなどから、市場は緩やかながらも成長していくとの見通しを示した。