デジタルガレージ、日本電気(以下、NEC)、レピダムの3社は、データを暗号化したまま利活用できる秘密計算技術の普及を目的とした会議として「秘密計算研究会」を発足した。本研究会は、秘密計算の技術研究開発・サービス開発を行う企業や研究機関などの組織と協力して、技術の安全性を客観的に評価するための基準作りや技術の理解促進のための情報発信などに取り組むとしている。
秘密計算は、高度な暗号理論を用いて、データを暗号化した状態のままで、データベース処理、統計分析、AIによる分析などができる技術だという。
「秘密分散」をベースとするもの、「準同型暗号」をベースとするものなど、アプローチの異なる多数の方式が存在し、それぞれ独立に研究開発が進められてきた。そのため、方式によらない俯瞰した議論がされておらず、安全性や性能などを一定の基準で比較することはこれまで専門家の間でもなされず、社会実装の妨げとなっているという。
秘密計算研究会は、上記の課題を解決し、秘密計算技術が広く社会実装され、クラウドサービスのデータ保護に対する不安の払拭や、組織や企業の枠を超えたデータ利活用により新たな価値が創出されることを目的とし、以下の活動を推進していくとしている。
- 様々な秘密計算方式を俯瞰した実用的かつ客観的な安全性基準や、ユーザーが秘密計算を活用する際の参考となる指針の検討
- ホームページやイベントを通じた、上記基準や指針の検討状況、方式の性能などに関する技術資料や先端事例の情報発信
秘密計算の想定される活用例
医療分野では、ゲノムバンクが保有するゲノム情報と、医療機関が保有するカルテ情報を安全に統合して分析することで、ゲノムと疾病の関係解明など、医学研究が促進されることが期待される。また金融分野では、複数の金融機関の送金情報を安全に共有することで、不正送金をより高精度に検知することが可能になると考えられている。
本研究会においてNECは、様々な秘密計算方式の整理や、安全性を評価する基準案の提案など、主に技術面から運営に貢献。デジタルガレージとレピダムは、秘密計算の事業化の活動を推進しており、本活動に利用企業の観点で貢献するという。
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