野村総合研究所(NRI)は、東京都内の大企業に勤務する20~60代の男女合計3,090人を対象に、働き方と郊外・地方移住に関するインターネットアンケート調査を実施し、その結果を発表した。なお、同調査では、従業員が300名以上の企業を「大企業」と定義。アンケート対象者は、テレワーク実施者と未実施者の両方を含むとしている。
調査概要
- 調査名:働き方・住まいに関する調査
- 調査時期:2023年7月10日~18日
- 調査方法:インターネットアンケート
- 調査対象:東京都内の大企業(従業員300名以上の企業)に勤務する20~60代の男女(回答者数は、東京都における会社員〔パート・アルバイトを除く〕の性・年代別構成比〔10歳刻み〕に応じて割付)
- 有効回答数:3,090人
- 主な調査項目:現在と理想の働き方、現在の居住状況、住まいに対する価値観、転居の意向、郊外・地方への移住意向、住まいとライフイベントの関係性など
「週3日以上出社」の割合は75%で、前回調査の60%から増加
2023年7月時点の出社頻度を尋ねたところ、「毎日出社」が過半数(53.1%)を占め、「週3日以上」が7割以上(75.1%)だった。前回調査時の2022年2月(東京都で最後のまん延防止等重点措置の期間中)は、「毎日出社」が38.3%、「週3日以上」が59.7%であったことを踏まえると、出社回帰の傾向がみられるという。
前回調査時(2022年2月)から今回調査時(2023年7月)にかけて出社頻度が増加した人に、出社が増加した理由(複数選択可)を尋ねたところ、「勤務先の方針やルールが変わり、出社を求められるから」(39.0%)が最も多く、企業側の要請が出社増加の主たる要因だと考えられる。一方で、「出社したほうがコミュニケーションを円滑に取れるため、自主的に出社を増やしたから」(28.2%)や、「出社したほうが業務に集中できるため、自主的に出社を増やしたから」(23.7%)など、会社員側が自ら出社を増やしたケースも見受けられる。
アフターコロナで出社は増加したが、郊外・地方への移住意向は維持されている
郊外・地方への移住意向を尋ねたところ、直近1年間に移住意向がある人は全体の15.3%、5年以内に意向がある人は全体の28.4%と、それぞれ前回調査から微増した。アフターコロナで出社回帰の傾向が見られるものの、「郊外・地方移住ニーズ」は高い傾向が続いている。この理由としては、「都心よりも住宅費が抑えられる郊外・地方への関心が高まっている」「テレワークの浸透によって、より広い居住面積を有する郊外の住宅ニーズが高まっている」などが推察されるという。
郊外・地方への移住意向がある人は、ポスト一次取得層(25~34歳)が多い
年代別および現在の居住形態別の郊外・地方移住意向を見ると、現在は賃貸住宅に居住している若年層(25~34歳)の移住意向は40%を超えており、比較的高い傾向がみられる。また、郊外・地方への移住意向がある人に対して、「いつかは家を所有したい(持家を持ちたい)」という価値観について尋ねたところ、「そう思う」と回答した割合が56%であり、移住意向がない人の割合(46%)に比べて、10%高い結果となった。
上記より、郊外・地方への移住意向がある層は、現在は賃貸住宅に居住している若年層(25~34歳)で、かつ将来的には持家に居住したいと考えている層だと考えられ、一般的な住宅の一次取得者層の平均年齢を踏まえると、「次世代の一次取得層(ポスト一次取得層)」の人だと考えられるとしている。
移住の実現には、「買い物・交通利便性の向上」と「高い出社頻度の解消」が必要
郊外・地方移住ニーズを持つポスト一次取得層の移住を促すにあたっては、以下の課題があるという。
郊外・地方における生活面での利便性向上
郊外・地方移住意向ありの人に、郊外・地方への移住時の現実的なハードルは何か聞いたところ、「買い物などの利便性が下がる、商業施設が遠くなる」が22.8%で最も多かった。他に街の機能などの生活面に関わる項目としては、「公共交通機関が整備されていない」(15.1%)もハードルとして回答する人が多い結果となった。
高い出社頻度の解消
理想の出社頻度を尋ねたところ、「現在より出社頻度を減らしたい」と回答した人の割合は、郊外・地方移住意向なしの人よりも、郊外・地方移住意向ありの人のほうが多かった。特に、「郊外・地方移住意向があり、かつ現在週3日以上出社している人」は、約60%が現在より出社頻度を減らしたいと回答しており、郊外・地方移住意向のある人にとって週3日以上の出社は移住のハードルになると考えられるという。
他方で、今回の調査で転職意向について聞いたところ、郊外・地方移住意向ありの人のうち「今後1年の間に転職を考えている」人は47.6%で、郊外・地方移住意向なしの人(23.9%)に比べて、23.7%高くなった。また、転職の検討理由について聞いたところ、郊外・地方移住意向ありの人のうち、「テレワークの制限によって理想の働き方が実現できないこと」が理由だと回答した人は23.6%で、郊外・地方移住意向なしの人(14.8%)に比べて、8.8%高い結果となった。これらから、郊外・地方移住意向ありの人の中には、出社頻度を転職の判断軸の一つとする人が一定数いると推察されるとしている。
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