Zscalerは6月10日から13日(現地時間)まで、年次カンファレンス「Zenith Live」を米国ラスベガスにて開催した。「Zero Trust Meets AI」をテーマに、ゼロトラストやデータ保護、AIなどの最新情報を扱い、60以上の分科会を実施。4日間の来場者は1,500人以上に上るという。
6月12日の基調講演にはZscaler CEOで創業者のJay Chaudhry氏が登壇。AIについて「素晴らしい技術だが、危険な面もある」と警鐘を鳴らす。「かつて攻撃に時間がかかっていたものも30秒以内にできるほどだ。フィッシング攻撃が危険であることは誰もが知っているが、わずか7つのChatGPTクエリで本物そっくりのログインページを作ることができる。そのため、我々はそれらの技術に先手を打つ必要がある」と訴える。
では、どうすればいいのか。Chaudhry氏は、簡単な比喩として銀行強盗を挙げた。犯人は、「すべての銀行の支店を探し」「その中から最も安全性の低い支店を見つけて侵入」「金庫を探す」「逃げる」といった4ステップ。サイバー空間では、あらゆるパブリックIPやファイアウォール、VPN、アプリケーションが攻撃対象となる。そのため、Zscalerではこれら4つの段階すべてを確認することに重きを置いているという。「AIでAIと戦う。攻撃者はAIを使うことで速く侵入できると考えているが、私の答えはノーだ。我々はAI攻撃をかわすための知恵と技術をもっているからだ」とChaudhry氏。
Zscalerは、包括的な統合型ゼロトラストプラットフォーム「Zscaler Zero Trust Exchange」を提供している。ユーザーがどこからでも、どんなデバイスからでも、あらゆるアプリケーションへのセキュアなアクセスを可能にしている。大量のトラフィックがあるので、それらを適切にチェックすることが欠かせない。Chaudhry氏は「我々のリスクシグナルはもちろん、サードパーティからリスクシグナルを取得することで、今後もさらに洗練されたアダプティブ・アクセスを提供していく。これらはポリシーエンジンと一列に並んでいるからこそできること」と述べる。Chaudhry氏は改めて、攻撃表面の最少化、侵入防止、横方向の移動排除、そしてデータが盗まれるのを阻止するという4つの段階をすべて確認することで、ランサムウェア攻撃に対抗することを強調した。
また、昨今IoTデバイスが普及していることを挙げる。研究開発が多くされており、数兆台のデバイスが存在しているだろう。しかし、IoTデバイスの脆弱性を狙った攻撃は少なくない。そこで、同社はSIMカードの技術を応用した「Zero Trust SIMs」の提供を発表した。同製品は、ソフトウェアエージェントやVPN接続なしに、セキュアな通信を可能にするという。SIMは特定の企業に割り当てられるため、誰が使っているデバイスであるかの特定も容易になるとした。
続けて、BtoB向けのゼロトラストに話題を移すと、「ビジネスをより俊敏に、競争力のあるものにするためには、顧客や顧客、パートナーとのオンライン接続を強化すること」とChaudhry氏。外部との接続ではサプライチェーンリスクを最小化することは欠かせない。そこで同氏は、世界中で利用されているブラウザ「Google Chrome」の企業向けサービス「Chrome Enterprise」にZscalerを統合することを明らかにした。登壇したGoogle Cloud ゼネラルマネージャーで、クラウドセキュリティのバイスプレジデントのSunil Potti氏は、従来のVPN接続や、追加のブラウザを必要とせずにセキュアにアクセスできるとして、ゼロトラストの民主化につながると話した。
生成AIアプリを安全に利用する取り組みも紹介。Chaudhry氏は「まず始めにすべきことは可視化することだ。すべてのユーザーがどんなサービスを使っているのかを明らかにする必要がある」と話す。それらを明らかにすることで、特定のユーザーグループが使用するサービスを特定でき、ポリシーを適用することにつながる。「ChatGPT」や「Microsoft Copilot」などの生成AIアプリがあるが、Zero Trust Exchangeで、ユーザーグループごとにアクセスできる生成AIアプリを管理できるようにするという。
最後にChaudhry氏は「ときにはテクノロジーではなく、考え方の違いで足止めを食らうことがあるだろう。それらは恐怖心からくるもので、進歩を停滞させる。成功のためには根本的な変革を推進することが必要だ」と変革に取り組む参加者らにエールを送った。
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