IBMは、AIモデル・ファミリーである「Granite 3.0」のリリースを発表した。
Granite 3.0ファミリーには以下が含まれる。
- 一般/言語:Granite 3.0 2B Instruct、Granite 3.0 8B Base、Granite 3.0 2B Base
- ガードレールと安全性:Granite Guardian 3.0 8B、Granite Guardian 3.0 2B
- 混合エキスパート:Granite 3.0 3B-A800M Instruct、Granite 3.0 1B-A400M Instruct、Granite 3.0 3B-A800M Base、Granite 3.0 1B-A400M Base
新しいGranite 3.0 8Bおよび2B言語モデルは、エンタープライズAI向けの主力モデルとして設計されており、検索拡張生成(RAG)、分類、要約、エンティティー抽出、ツール使用などのタスクでパフォーマンスを発揮するという。企業データで微調整し、多様なビジネス環境やワークフローにシームレスに統合できるように設計されているとのことだ。
IBMとRed Hatが今年5月に発表したInstructLabを活用し、小規模なGraniteモデルを企業データと組み合わせることで、企業は大規模なモデルに匹敵するタスク固有のパフォーマンスを、わずかなコストで達成できるとIBMは考えているという。
IBMは、Granite 3.0のリリースは、AI製品の透明性、安全性、信頼性の構築に対する同社のコミットメントを再確認するものだとし、Granite 3.0のテクニカル・レポートと責任ある利用ガイドは、これらのモデルの学習に使用されたデータセットの説明、適用されたフィルタリング、クレンジング、キュレーションの手順の詳細、および主要な学術ベンチマークと企業ベンチマークにわたるモデルのパフォーマンスの包括的な結果を提供すると述べている。
同社は、watsonx.ai上のすべてのGraniteモデルに対してIP補償を提供している。
ハードルを上げる:Granite 3.0のベンチマーク
Hugging FaceのOpenLLM Leaderboardによって定義された標準的な学術ベンチマークにおいて、Granite 3.0 8B Instructモデルの全体的な平均性能は、MetaやMistralの同規模の最先端オープンソースモデルを上回っているという。IBMのAttaQ安全性ベンチマークでは、Granite 3.0 8B Instructモデルは、MetaやMistralのモデルと比較して、測定した安全性のすべての基準で上回っているとのことだ。
RAG、ツールの使用、およびサイバーセキュリティ領域のタスクの中核となる企業タスクの全体にわたって、Granite 3.0 8B Instructモデルは、他社の同規模のオープンソース・モデルと比較して、平均してトップクラスのパフォーマンスを示しているという。
Granite 3.0モデルは、日本語を含む12種類の自然言語と116種類のプログラミング言語から収集された12兆トークン超のデータを利用して、データ品質、データ選択、学習パラメーターを最適化するために設計された数千の実験結果を活用した、新しい2段階学習法を用いて学習されたとのことだ。年末までに、Granite 3.0 8Bおよび2B言語モデルは、拡張された128Kのコンテキスト長とマルチモーダル文書理解機能をサポートする予定だとしている。
同社は、Granite 混合エキスパート・モデル、Granite 1B A400MおよびGranite 3B A800Mを、CPUベースの展開だけでなく、低レイテンシーのアプリケーションにも展開可能な小型軽量モデルとして提供している。
また、2024年の初めに最初のバージョンがリリースされた、事前学習済みのGranite時系列モデルの更新版のリリースを発表。これらの新しいモデルは、3倍以上のデータで学習され、3つの主要な時系列ベンチマークすべてにおいて、GoogleやAlibabaなどが提供する10倍以上のサイズのモデルを上回る性能を発揮すると述べている。
Granite Guardian 3.0の紹介:責任あるAIの次の時代を切り拓く
IBMは、今回のリリースの一環として、アプリケーション開発者がユーザーのプロンプトや大規模言語モデル(LLM)の応答を様々なリスクの観点から確認することで、安全対策を導入できるGranite Guardianの新シリーズも発表した。
社会的偏見、憎悪、攻撃性、冒涜、暴力、ジェイルブレイキングなどの有害性に加えて、これらのモデルは、根拠、文脈の関連性、回答の関連性といったRAG特有のチェックも提供。19の安全性とRAGベンチマークにわたるテストにおいて、Granite Guardian 3.0 8Bモデルは、MetaのLlama Guardモデルの3世代すべてよりも、有害性検出において全体的に高い平均精度を示したとのことだ。また、ハルシネーション検出においても、このタスクに特化したモデルであるWeCheckやMiniCheckと比較して、平均して同等の総合的な性能を示したとしている。
Granite Guardianモデルは、対応するGraniteの言語モデルから派生したものだが、オープンまたは専有のAIモデルと併用して、ガードレールを実装するために利用することも可能だという。
Granite 3.0モデルの提供形態
すべてのGranite 3.0モデルと更新版の時系列モデルは、Hugging Face上で寛容型のApache 2.0ライセンスのもとでダウンロード可能。新しいGranite 3.0 8Bおよび2B言語モデルと、Granite Guardian 3.0 8Bおよび2Bモデルの指示追従モデルは、IBMのwatsonxプラットフォーム上で商用利用が可能だという。Granite 3.0モデルの一部は、NVIDIA NIMマイクロサービスとして、またGoogle CloudのVertex AI Model GardenとHugging Faceとの統合を通じて利用できるようになるとのことだ。
加えて、開発者に選択肢と使いやすさを提供し、ローカルやエッジ展開をサポートするため、Granite 3.0モデルの厳選されたセットは、OllamaとReplicateでも利用できるとしている。
最新世代のGraniteモデルは、IBMのLLMのオープンソース・カタログを拡張。AWS、Docker、Domo、Qualcomm AI Hub経由のQualcomm Technologies、Salesforce、SAPなどのエコシステムパートナーと協力し、Graniteモデルをこれらのパートナーの製品に統合するほか、Graniteモデルをそれぞれのパートナーのプラットフォームで利用できるという。
アシスタントからエージェントへ:エンタープライズAIの未来を実現
Graniteコード・モデルを搭載し、C、C++、Go、Java、Pythonなどの言語に対する汎用的なコーディング支援や、エンタープライズJavaのアプリケーション・モダナイゼーション機能を提供する次世代のwatsonx Code Assistantの次期リリースも発表。これにより、Graniteのコード機能は、Visual Studio Codeの拡張機能であるIBM Granite.Codeからもアクセスできるようになったとのことだ。
また、watsonx.aiを通じて、開発者がAIをより効率的に構築、カスタマイズ、展開できるように、エージェント・フレームワーク、既存環境との統合、RAGやエージェントなどの、一般的なユースケースのためのローコード自動化などといった新しいツールをリリースする予定だという。
加えて、IBM watsonx Orchestrateに新しいAIエージェント・チャット機能を導入する予定だとしている。この機能は、エージェント機能を使用してAIアシスタントやスキル、自動化をオーケストレーションし、ユーザーがチーム全体の生産性を向上できるように支援するという。同社は、2025年には、特定のドメインやユースケース向けの事前構築エージェントなど、ポートフォリオ全体にわたってエージェント機能を構築し続けていく予定だと述べている。
AI搭載の拡張されたデリバリー・プラットフォームにより、IBMのコンサルタントをAIで強化
AIを活用したデリバリー・プラットフォームであるIBM Consulting Advantageの拡張を発表。このマルチモデル・プラットフォームには、AIエージェントやアプリケーション、反復可能なフレームワークのようなメソッドが含まれており、16万人のIBMコンサルタントが、より優れた顧客価値を、より迅速に、より低コストで提供できるようにするとしている。
この機能拡張の一環として、Granite 3.0言語モデルが、Consulting Advantageのデフォルトモデルになるという。
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